【フィラディス実験シリーズ第24弾 】生ハムとマリアージュするワインとは!?(営業 松本 好平)

2019.08.02ニュースレター

今回のマリアージュ実験のテーマは「生ハム」です。
一言に生ハムと言っても世界には数多くの種類があり、産地や製法の違いによりその印象には違いがかなり見られます。今回はその中でも、日本において楽しまれる機会の多い3種の生ハムに絞り、それぞれに合うワインはどのようなワインなのかを探るべく、実験を行ってみました。

用意した生ハム3種について

イメージ実験結果をお伝えする前に、今回用意した生ハムの銘柄、及び特徴を簡単にまとめます。

基本的に生ハムを作るのに必要なものは「豚肉」「塩」「空気(気候・風土の意)」「時間(熟成のため)」の4つだけと言われているほどシンプルです。

その中で「空気」については各産地である程度共通の特徴が見られるため、それぞれの生ハムの違いを生み出す主な要因にはなりません。

作られる生ハムの違いを生んでいる大きな要因として挙げられるのは、「素材(豚の種類)の違い」「製造方法(塩の使い方)の違い」「熟成期間の違い」の3つであると言えます。

それらの点に着目しつつ、3種の生ハムの特徴を以下にまとめます。

ハムリスト

用意したワインについて

今回は生ハムというお題のため、飲食店様のご協力、および大掛かりな調理が必要ないことから社内の会議室にて行うことができました。

そのおかげで・・・用意したワインは白、赤、ロゼで合計24種!
これを3種の生ハムと合わせたので、計72パターンの組み合わせを試した事になります。。。
これまでの実験の中でも、1・2を争う過酷な実験になったのはナイショです。。。

今回は下記の表にまとめた通り、「白・ロゼ」で12種を、そして「赤」で12種を用意し、それぞれ3種の生ハムにどのワインが合うのか、また逆に合わないのかを見ていきました。

ワインリスト

検証すべき要素は「フレーバー」「五味(甘味、酸味、塩味、旨味、苦み)」「ボリューム感」「テクスチャー」です。
それぞれがどのように合うかを判断する際は、以下のマリアージュポイントを参考にしました。

同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う)
中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる)
補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)

※マリアージュ理論の詳しい内容は以下よりご覧ください
[2013年12月号] 第1回若手ソムリエ応援プロジェクト 『マリアージュ理論セミナー』の講義内容を公開します!
http://www.firadis.co.jp/newsletter/201312

結果発表

それぞれの生ハムごとに「白&ロゼ12種」「赤12種」とのマリアージュ実験を行った結果、合うor合わないとされたワインについて、特に顕著な結果が出た組み合わせを抜粋してご紹介します。
※()内の数字はリストのNo,に対応

〔A〕 Prosciutto di Parma

・白・ロゼ

合ったワイン☟

2018 Caprice de Clementine Rose / Ch. Les Valentines (12)
白&ロゼの中で最も票を集めたのは、プロヴァンスのロゼでした。ほんのりある塩気とほのかなタンニンが生ハムの塩味および柔らかな質感と合う!という意見(五味とテクスチャの同調)が多く上がりました。またワインの持つ甘みが生ハムの塩気と相まって、まるで生ハムメロンを食べているようだとの意見(五味の補完、相乗)も。
2017 Just B / Just B Wines (3)
リアスバイシャスの持つ最大特徴である塩味が生ハムの塩味と同調し、かつ生ハムの旨味がワインの持つ甘みをいい具合に引き立てている、との意見で一致。
2017 Riesling Quant / Carl Loewen (2)
これはまさに生ハムメロンのイメージで、ワインの残糖からくる甘みととろみのあるテクスチャーが生ハムの脂身と合わさると味わいの厚みが増し、鼻に抜けるフルーティーさと塩気がバランスよく、つい食べ進めてしまうとの声。

合わなかったワイン☟

2017 Chardonnay / Michael David (11)
合わせる前から少し予感はありましたが・・・やはり強い樽香は繊細で柔らかなプロシュットの良さを覆い隠し、その存在が消えてしまったかのように感じられました。
2016 Macon Clos de la Maison / Cordier P&F (Domaine) (10)
こちらもやはり樽香がネックに。カリフォルニアに比べて樽は控え目なのでその点はまだ良かったものの、今度はブルゴーニュの持つミネラル感が苦味のように感じられてしまい、相性の悪さを感じてしまう結果でした。

・赤

合ったワイン☟

2014 Chianti Classico / Castell’in Villa (18)
これは流石!というべき?イタリアを代表する生ハムに、イタリアを代表するワインのキャンティ。特にこの造り手が持つワインの質感の柔らかさ・滑らかさと、塩っぽいミネラルがちょうど寄り添い、生ハムと見事に同調してくれました。
2015 Pinot Nero / Falkenstein (15)
果実の主張度合いが程よく、そして固すぎないミネラル感が生ハムの持つ旨味を押し上げてくれたイメージでした。またタンニン量も多過ぎず、プロシュットの脂とよく合っていたとの声が上がりました。
※比較として、ブルゴーニュのピノだとミネラルがタイト過ぎて生ハムの柔らかな質感とはズレてしまい、バランス悪く感じられました。
2017 Dolcetto d’Alba / Giacomo Grimaldi (13)
果実味の柔らかさ、ジューシーな甘みと軽やかさがプロシュットのボリューム感とバランスよく合っていました。酸も強過ぎないので、ワインと生ハムそれぞれが存在感を示しました。

合わなかったワイン☟

2016 Cuvee Shyrus / Fond Croze (21)
ボリューム感が全く合わない。濃縮した果実味により繊細で上品なプロシュットの味わいが完全に消えてしまう。
2015 Ch. Petit Freylon Cuvee Sarah / Bordeaux Superieur (22)
香りがチグハグな印象で、合わせると不快に感じてしまう香りに。またタンニンがアフターに強く現れてしまい、繊細な味わいを消してしまう。
2016 Silver Label (12 Meses) / Juan Gil (24)
甘くて濃厚な果実味が全てを包み込んでしまう。ハムがいなくなってしまう。

以上の結果から、プロシュットに合わせるためのポイントとしては

 ・ハムの柔らかい食感を活かすことのできる、柔らかなテクスチャーを持っている
 ・ハムの繊細な香り・味わいを感じられる中程度のボディ(強すぎる果実や樽はNG)
 ・ハムのほのかな塩味と旨味を引き立たせるための、程よい果実味の甘さがある
 ・脂分はさほど多くないので、酸やタンニンが強すぎるとNG

上記のような特徴が導き出されてきました。

〔B〕 Jamón Serrano

・白・ロゼ

合ったワイン☟

2016 Vallee d’Aoste Petite Arvine Vigne Rovettaz / Grosjean (9)
ハモン・セラーノ×白・ロゼで目立った高評価を得られたのは、唯一このアイテム。ワインの持つカリンのような甘やかさを感じる果実味に、オイリーさを感じるテクスチャー、そして強過ぎない樽香が、プロシュットよりも肉の風味を増したハモン・セラーノに負ける事なく寄り添い、味わいの下支えをしてハモン・セラーノを引き立ててくれていた印象でした。

合ったワイン☟

2016 Macon Clos de la Maison / Cordier P&F (Domaine) (10)
合わせると何故か、ひねた日本酒のような心地良くない香りが生まれてしまいました。単体で飲んで美味しいこのMaconが、残念ながら安い樽酒になってしまったようにさえ感じられた、という声も上がりました。

・赤

合ったワイン☟

2014 Chianti Classico / Castell’in Villa (18)
なんとここでも、Chiantiが一番の評価をされました!ハモン・セラーノはプロシュットに比べて肉の味わいが強い分、アタックの果実感は少し物足りなく感じる面もありましたが、中盤から伸びてくる旨味が見事に同調し、お互いを高め合っているように感じられました。

合わなかったワイン☟

2016 Cuvee Shyrus / Fond Croze (21)
こちらも残念ながらまたしても・・・という結果です。ハモン・セラーノの味わいや香りが完熟・濃縮した果実味で完全にかき消されるため食感だけが残り、味気のないゴムをかみ続けているような感覚に。お世辞にも美味しいとは言えない組み合わせになってしまいました。

プロシュットと比較すると、肉自体の香りや味の強さ、塩味の強さ、そして食感の強さが目立つため、必然的に合うワインに求められる要素も明らかに強くなりました。その部分が白ワインとのマリアージュでの結果の違いに顕著に表れた形です。プロシュットとの比較としてまとめると

 ・テクスチャーは引き続き柔らかめが望ましい
 ・肉の風味が増した分、ワインに求めるボディの強さも若干アップ(ただ、強い樽香はNG)
 ・脂分はこちらもさほど多くないので、酸やタンニンが強すぎるとNG

上記のような特徴にまとめられます。

〔C〕 Jamón Iberíco

・白・ロゼ

合ったワイン☟

2016 Vallee d’Aoste Petite Arvine Vigne Rovettaz / Grosjean (9)
ワインの持つ柑橘系のニュアンスが、ハモン・イベリコの豊富な脂と溶け合い、口中で心地よい甘み(生ハム、ワインの両方から出てくる甘み)が膨れ上がった印象でした。「今回の白ワイン×生ハムの組み合わせの中で1番良い!」という声も数名から上がったほどでした。

合わなかったワイン☟

2016 Inspiration / Gavaisson (6)
2017 Gruner Veltliner Langenlois / Weszeli (4)
これら2つのワインとの組み合わせが低評価な理由は非常にシンプルで、ハモン・イベリコがワインの味わいに対して圧倒的に強過ぎる、という点でした。ワインの存在感がほぼなくなってしまう…という声がほとんどでした。

・赤

合ったワイン☟

2014 Rioja Reserva / Baron de Ley (19)
明らかに前2つの生ハムとは違った票の入り方になり、初めてリオハがランクイン!1位となりました。これまでの2つとの明確な差は、やはり脂。常温でも溶け出してしまうほどの豊富な脂でしたが、アメリカンオークからくる甘さが非常に心地よくその豊富な脂を包み込み、その上でリオハの持つ酸とタンニンが余分な脂をうまく流してくれていました。

合わなかったワイン☟

2016 Cuvee Shyrus / Fond Croze (21)
悲しいことにワースト三連覇・・・総じてワインの強い果実味が生ハムの味わいを消してしまう、という点がすべてのハムとの組み合わせを通して共通しました。ただ、ハモン・イベリコになると前2つのハムに比べてかなり味わいも脂も強くなるため、大分マシだという声も上がりました。

これまでの2種に比べて圧倒的に肉の味わいの凝縮感、そして脂の強さが上がる分、合うワインの条件が明らかに変化しました。特にマリアージュの観点においての変化が見られた要因は「脂」だったと言えます。それを踏まえると

 ・テクスチャーは引き続き柔らかめ、特に白ではオイリーさを感じるほどでも良い
 ・肉の風味の凝縮度、および脂分が増した影響で、樽香がマッチするようになった
 ・豊富な脂分をきれいに流してくれる酸やタンニンとの相性がグッと上がった

以上がポイントであると言えます。

実験を終えて・総論

一概に生ハムとは言えども、並べて食べるとその味わいに明確な差があることは実食時点でハッキリと分かりました。ただ、味わいの構成要素はすべてのハムで共通して「柔らかみのあるテクスチャー」「肉の風味」「凝縮した旨味」「塩気」そして「脂」というシンプルな構造で、それぞれの要素がどうバランスを取っているかにより三種それぞれの個性が作られていたと言えます。

その分、その構成要素にそもそも合わない特徴(生ハムの柔らかなテクスチャーと相反する固いストラクチャーや、ハムの風味を覆い隠してしまうほど強い果実感や樽香)を持ったワインはことごとく合わないと判断されたのだろうと言えます。

逆にマリアージュしたワインの特徴としては、生ハムが持つ繊細な味わい、塩気と旨味を活かすことができたワインだったと言えます。そのための共通条件を挙げるとすると

1. 生ハムと同調できるほどのやわらかさのあるテクスチャーを持つ

2. ボリューム感は中程度(大きすぎると生ハムが消えてしまう)

3. 生ハムの塩気と同調するミネラル感(特に塩気)を持つ Or 生ハムの塩気を引き立たせるような優しい甘みを持つ

豚さんこのような部分が全てで共通していたと言えます。

今回は3種の生ハムを用意したため、最終的な結果(選ばれたワイン)に違いは出ているものの、総じて生ハムとの相性を考える際には、上記のポイントを押さえてもらうときっと良い結果が得られるはずです!