[2019年3月号] 【フィラディス実験シリーズ第22弾】 ラム肉にマリアージュする赤ワインの条件とは? (営業 伊津野 朝子)

2019.03.12ニュースレター

今回のマリアージュ実験のテーマは、ラム肉です。

 

ラム肉はしっとりとした赤身に脂がしっかりと乗っていて咀嚼を必要とする強いお肉なので、スパークリングや白ワインでは対応しきれないだろうことが予想されるため、今回は赤ワインに絞って検証を行いことにしました。

 

また、「アニョ・ド・レ(乳飲み子羊)」といえばローストして供されることの多いボルドー地方の定番料理の一つです。伝統的なマリアージュの定説では、ボルドーの中でも力強い味わいのポイヤックが合うと言われています。実験では、本当にラム肉にポイヤックが合うのかを明らかにするとともに、世界各地の赤ワインで合うのはどんな条件のワインなのかも考えていきたいと思います。

 

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実験方法

〇フレンチラムラック(骨付き)をグリルし、シンプルに塩で味付け。必ず赤身と脂を一緒に口に入れて咀嚼する。

〇ワインはブラインドにてテイスティングする。

〇予選は①ボルドー&ブルゴーニュ ②イタリア&ローヌ ③スペイン &新世界のチームごとに行い、点数を付ける。その中から高得点のものを選定の上全員で再度検証し、最終順位を決定する。

ラム肉評価基準

マリアージュの判断方法

「ボリューム」「テクスチャー」「フレーバー」「五味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)」について、以下のマリアージュポイントを参考にしながら分析します。

☆マリアージュポイント☆
・同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う)
例:タイムの香りがする料理にグリーンノートのあるワインを合わせる。
・中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる)
例:ワインのタンニンが仔羊の脂を中和する。
・補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)
例:塩味&旨味を持った料理に甘味&酸味を持つワインを合わせ、五味を補完し合う。

[ラム肉の特徴]
・独特の香り
・厚みもあり適度な噛み応えがある
・脂がしっかりと乗っていて、存在感がある
・肉質はしっとりと柔らかく、肉自体に甘味がある
・肉の種類の中では強い方

実験結果

【予選の結果】

① ボルドー&ブルゴーニュ
予選①組は、ボルドー・メドックの各村を取り揃え、更に当初合わないと予想されたブルゴーニュも検証しました。

このラインナップの中から決勝に進出したのは3種類、酸とタンニンが強くラムの脂との相性が良かった2. Virgnie de Valandraud、スパイシーさやスモーキーさが肉を引き立ててもっと食べたいと思わせた 5. Ch.Lagrange、ワイン自体に黒胡椒などのスパイスや皮や焼いた肉のニュアンスがあるため相性が良かった 3. Fleur de Clinetでした。

ラム肉AR_BR

皆さま、お気づきでしょうか。。 そうです、予選の段階で本命だったポイヤックは落選となってしまいました…!!

ポイヤックの若いワイン代表として用意した 7. 2014 Ch. d’Armailhacは、ポイヤックの中でも丸みがあるまろやかな味わいのワインだったため、ラム肉と合わせると全体的に丸くまったりした質感になってしまいメリハリが感じられず、悪くはないのですが素晴らしい!と言えるような組み合わせではありませんでした。

そして、ポイヤックの熟成したワイン代表として用意した 8. 1996 Ch. Croizet Bagesは、最も低い点数となりました。熟成でこなれることによってワイン自体のパワーやストラクチャーは弱くなっているため(それが熟成の醍醐味なのですが…)、ラム肉のしっかりとした味わいを支えることができず、ワインが酸っぱく感じるとともに、ラム肉特有の香りが強調されて、バラバラになってしまいました。

そのほか、唯一のピノ・ノワールである1. Santenay 1er Cru Clos Faubardは、ボリュームもテクスチャーも合わず、ラム肉の強さにワインが完全に負けてしまうという予想通りの結果に。4. 2013 Ch. Lafon Rochet6. 2013 Ch. Ferriereも果実味がやや控えめな繊細な味わいだったため、ラム肉の強さが優ってしまいました。
予選の結果から、ボルドーの中でも果実味がしっかりあり、かつ若いヴィンテージの方が合いやすいことが分かりました。今回は2014年ヴィンテージが中心でしたが、より果実味が強い年のワインであればもっと相性は良かったかもしれません。

②イタリア&ローヌ

イタリア・ローヌワインのチームからは、 5. Brunello di Montalcinoが決勝進出です。ワインの持つスモーキーさがラム肉の脂と非常に相性が良く、ボリューム感やストラクチャーのバランスも取れていました。
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次いで評価が高かったのが、 1. Lirac Le Gourmandです。ボリュームとテクスチャーは合っていましたが、果実味とラム肉の甘やかさが融合するというより方向性が違っている印象を受けました。またタンニンや酸の骨格が弱いため後半に肉の臭みが出て余韻の広がりも感じられませんでした。

2. のシラーはワインの果実味やバニラが強く出た樽香とラム肉のフレーバーが喧嘩して、ワインもラム肉も両方が美味しくなくなってしまいました。3. Sforzato di Valtellina はヨード系の香りがラム肉にもまずまず合いましたが、ワインのアフターの酸とタンニンが強くまとまりませんでした。 4. Barolo は、ワインが繊細でややラム肉に負けてしまい、ワインのタイトさが目立ちました。また、肉のフレッシュさとワインの落ち着いた味わいが別方向を向いているような印象を受けました。 6. Chianti Classicoもタンニンがラム肉を支えられず臭みの部分が目立ってしまいました。 7.のアリアニコは逆にワインの果実味が強過ぎてラム肉の味わいを覆ってしまいました。もう少しミネラル感など骨格がピシッとしていたらバランスが取れていたかもしれません。

③スペイン&新世界チーム

今回の実験で最も苦戦したのがスペイン・新世界ワインのチームでした。ほぼ全てのワインで果実の「甘味」が強すぎたため、ラム肉に勝ってしまう、あるいはその良さを覆ってしまいました。また甘味が強いせいで酸を感じにくく、料理を口に入れた時にボリュームもテクスチャーもバランスが悪くなってしまうというネガティブな結果が多くなりました。

そんな中、唯一の決勝進出は、6. Pruno でした。果実が強すぎるという意見はあったものの、その果実味が逆にソースのようにラム肉に合い、しっかりとした酸とタンニンがラム肉の脂の強さを受け止めて1つの料理のように感じさせました。

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1. のマルベック2. のシラーズ5. Silver Labelは果実味が肉を打ち負かしてしまうためNG。 3. のジンファンデルはその独特の甘やかな果実味とラム肉がバラバラの印象を受け、ボリュームで肉に負けていました。 4. ナパのCabernet Sauvignon7. Rioja Reserva も双方が相容れず、お互いを高めあう相乗効果はありません。8. Freakshow Cabernet Sauvignonも甘味が強すぎてラム肉もワインも甘くなってしまい合いませんでした。

決勝の結果

1位 2014 Ch.Lagrange  ボルドー サン・ジュリアン
2位 2014 Virgnie de Valandraud  ボルドー サン・テミリオン
3位 2013 Brunello di Montalcino Il Valentinao イタリア トスカーナ
4位 2016 Pruno スペイン リベラ・デル・ドゥエロ
5位 2014 Fleur de Clinet  ボルドー ポムロール

今回メドックの各村のワインを揃えましたが、1位と2位をボルドーが独占し、ボルドーワインがラム肉に圧倒的にマリアージュすることを証明する形となりました。

1位のCh.Lagrangeと2位のVirgnie de Valandraud に関しては僅差で、どちらもほぼベストマリアージュという評価でした。ただ評価は僅差でも、マリアージュの合い方の方向性は全く異なるという興味深い結果となりました。

Ch. Lagrange は「“補完”によって更なる高みへ連れて行ってくれるマリアージュ」です。ワインはカベルネ主体で中心にしっかりとした強さがあり、酸とタンニンに支えられた、骨格がしっかりとしている正に王道のボルドーワインの味わいであり、タンニンがラム肉の脂を中和し、肉の塩味・甘味・旨味に、ワインから酸味を加えて五味を補完する役割を果たし、マリアージュで感じる世界を大きく広げてくれました。

対してVirgnie de Valandraudは、「“同調”によって調和して包み込んでくれるマリアージュ」でした。分かりやすくメルロの特徴が出ており、それがラム肉の甘味と旨味に絶妙に寄り添って同調しました。Lagrange(カベルネ)は中心の強さ×肉の強さががっぷり四つに組んで「中心で合う」男性的なマリアージュでしたが、Virgnie de Valandraud(メルロ主体)は果実味×脂の甘味・旨味で寄り添い「包み込む」女性的なマリアージュだと言えるかもしれません。

5位にランクインしたポムロールはテクスチャーの相性は良いものの、上位の他のワインと比べるとラム肉のボリュームがワインに勝ってしまいややアンバランスで評価は伸びませんでした。

3位のBrunello di Montalcinoは、果実味は肉厚ではあるものの、ワイン自体のボリュームが大き過ぎず小さ過ぎず、酸・タンニンの高さも高過ぎず弱過ぎず、その程々感がちょうど良く、食事もワインもどんどん進むマリアージュでした。飛躍的に双方が美味しくなるというよりは、お互いのバランスがとれ、安心して食べて飲める組み合わせでした。それは食事にワインを合わせる上では理想的で非常に役に立つだろうと思います。

4位のPrunoは、果実味の強さが鬼門だったスペイン・新世界チームから唯一決勝に進出したワインですが、しっかりとした酸とタンニンがワインに骨格を与え、ラム肉の脂をきれいに中和してくれました。また存在感のある強い果実の甘味も方向性がラム肉にマッチしていたため、肉の甘味・旨味を引き立たせて更に広げてくれました。

≪まとめ≫

今回のマリージュ実験を通して、ラム肉にワインを合わせる際のポイントが見えてきました。

 ○強さ:果実のボリュームがしっかりあること(ただし果実の甘味を強く感じるものはNG)
 ○ストラクチャー:酸・タンニンによるしっかりとした骨格があること
 ○熟成感はNG

ラム肉に合わせるためには、ボルドーの中でも繊細な味わいのワインではなく、また新世界のたっぷりまったりとした果実味を持つ甘すぎるワインでもなく、ボルドーらしい力強い果実のボリューム感と、酸・タンニンがしっかりと支えるテクスチャーを兼ね備えたワインが必要です。

もしたっぷりと甘い果実味と柔らかいテクスチャーを持っているワインを合わせるのであれば、今回のようなシンプルなローストではなく、煮込み料理であったり、ベリーソースを添えるなどの工夫が必要です。

また共通意見として挙がったのが、「ワインの熟成感」は基本的に必要ないということでした。まずラム肉の特徴である野性的で強い香りが熟成香と合いません。また柔らかさはあるものの厚みもありしっかりと噛ませる肉質が、熟成した繊細なワインの良さを生かしてはくれませんでした。

ボルドー×ラム肉の組み合わせが1位2位を独占すると言うのは王道の結果ではあるかもしれませんが、様々な味わいのワインも加えて検証することで、なぜそれが王道なのか、どんな要素がマリアージュに必要なのかが見えてきました。調理法やお客様の好みによって合わせるワインはもちろん変わってくるとは思いますが、今回の結果が少しでもお役に立てば幸いです。