[2018年7月号] チョコレートの新潮流!『Bean to Bar Chocolate(ビーントゥバー チョコレート)』 ~ワイン×チョコレートのマリアージュの法則とは?(広報 浅原 有里)

2018.07.03ニュースレター

一過性のブームではなく、新しいチョコレートの価値・選び方として受け入れられつつある『Bean to Bar Chocolate(ビーントゥバー チョコレート)』。今回は、日本発のBean to Bar Chocolateメーカーであり「チョコレートを新しくする」という理念を掲げるMinimalの山下貴嗣代表にお話を伺い、Bean to Barとはどんなものなのか改めて整理してみます。

ワインとのマリアージュも気になりますよね?もちろん、検証実験レポートも後半でお伝えします!

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【Bean to Bar Chocolate (ビーントゥバー チョコレート) 解説】

● Bean to Bar は今までのチョコレートと何が違うの?

Bean to Bar Chocolateとは、カカオ豆の仕入れからチョコレート菓子として消費者の口に入るまでの全ての工程を一貫して作り手が行うチョコレートのことを言います。

一般的なチョコレート菓子は、メーカーや菓子店、ショコラティエ等が業務用チョコレートメーカー(ヴァローナ社や森永が有名)から液体状や固形状のチョコレートを仕入れ、砂糖やミルク、ココアバターなどを加え、香り付けなどの加工をして様々な菓子を作っています。仕入れる業務用チョコレートは既に出来上がったものであり、業務用メーカーが提供する味わいから選ぶものでした。

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しかし、Bean to Barでは、カカオ豆の産地や品種・質で選別して仕入れることから始まり、自社工房でカカオ豆からチョコレートができるまでの全工程を管理します。焙煎方法※や粉砕の細かさまで各工房のこだわりの手法で行われ、完成したチョコレートはカカオ豆の本来の美味しさをストレートに伝える個性的な味わいとなる事が多いという特徴があります。添加物や香料などを加えずに作る店が多いのもBean to Barの特徴の一つです。オーガニックや食材の来歴を重要視する世の中の流れと相まって、世界中で注目されています。

※チョコレートの焙煎とは?・・・豆を加熱することで「香り」と「コク」を引き出す工程のことです。焙煎の程度により、浅炒・中炒・深炒と呼ばれ、一般的には焙煎を進めるほど酸味が減り、苦味が増していきます。また、このとき「メイラード反応」が起こり、チョコレート独特の香ばしい香りや色味が生まれます。

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Bean to Bar とジャンル分けされていても理念やアプローチ方法は様々ですが、 Minimalでは、どのようなチョコレートに仕上げるのか、カカオ豆の個性に合わせた製品コンセプトを設計しています。それに沿って、通常の焙煎では高温で焼いて品質の違いを消すところ、香りや味わいの個性が残るように低温に設定したり、時間を変えたり、摩砕する粒の大きさを1,000分の1ミリ単位でコントロールしたりと繊細な加工を加えることによってチョコレートの香りや食感を調整します。また、副原料に使用するのは砂糖のみで ミルクやココアバターは添加しないというこだわりがあります。

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● カカオをめぐる「不都合な真実」

カカオは、西アフリカ、東南アジア、中南米など、赤道の南北緯度20度以内の高温・多湿な地域で栽培される熱帯植物であり、コーヒーやファストファッションと同様にフェアトレード※が叫ばれる産業の一つです。原料であるカカオの農園で働く人たちはいつまでたっても貧しいまま。そうした状況は何故生み出されてしまうのでしょうか?

※フェアトレード:開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、 立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」。

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カカオ生産者が収入を上げる道すじは、大きく分けて3つあります。「農園を拡大して収量を増やす」「カカオの木1本あたりの収穫効率を上げる」「カカオの取引単価を上げる」ことです。この中で特に問題となっているのは3つ目、「カカオの取引単価を上げ」たくても上げられない状況にあるということです。その要因には、構造的な2つの問題があります。

1つは、カカオの取引価格が先進国の先物取引の相場で決まってしまうということです。

15世紀半ばから始まった大航海時代にカカオ豆が中南米から持ち込まれたのを機に西欧諸国によってチョコレートが製造・消費されるようになりましたが、原料のカカオは植民地支配下の現地プランテーションで生産されていました。この構造は現在まで変わらず、カカオの価格決定は国際金融マーケットに牛耳られています。一般的に取引されるカカオは商品先物取引の銘柄のひとつで、投資家によって相場が形成され、生産と消費の需給バランスのほかに、国際情勢や他の投資商品の魅力度とのバランスで値が上下してしまいます。つまり、カカオ生産者が自ら値付けをして価格を上げる余地はないのです。

2つ目は、買い手も作り手も“品質を評価する”ことが圧倒的に遅れていることです。

通常、生産物の「単価を上げる」ためには品質や希少性などを高める方法が考えられます。ワインの場合はそれが非常に上手くいっており、産地・畑やブドウの出来、造り手など個々の評価がきっちりとされています。しかしカカオについて、買い手は大量生産するために複数の地域の豆をブレンドしてきたため、産地ごと・生産者ごとの品質の良さに目を向けることがありませんでした。生産者側に至っては、カカオ農家の多くがチョコレートを食べたことがないという状況のため、カカオとチョコレートの風味の関係性に目を向けることなど望むべくもありません。

こうした買い手と作り手の遠い距離と双方の無理解が、結果的にカカオ生産者の収入向上をはばむ壁として立ちはだかっているのです。

 

このような状況に対して、Minimalは産地や生産者毎の個性を活かしたより良いチョコレートを作るために、品質のよいカカオ(ファインカカオ)を求めて世界の生産農園を訪ね歩き、良質なカカオ豆を一般取引価格よりも高くパートナー農家から直接購入しています。※一部商社からもファインカカオを購入しています。

それによって、カカオ豆を正しく評価して値付けをすることになり、 金融マーケットの決める価格ではなく、自農家の品質の向上に見合った単価の向上をハンドリングできるルートを得ることになります。まだ取り組みは始まったばかりですが、この先プレミアがつくようなスター農家が生まれることも夢ではないかもしれませんね。

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● チョコレートの個性とは?

先ほどカカオ豆の個性を活かしたチョコレート作りの話をしましたが、「そもそもチョコレートの味わいなんてスイート/ミルク/ビターのように甘さや滑らかさでしか考えたことがなかった!」という方も多いのではないでしょうか。

チョコレートの味わいについては、ワインのように体系化された指標はないので様々な捉え方があるとは思いますが、今回はMinimal式の3つの味わい分類をご紹介したいと思います。

テイスティングしたMinimalの板チョコレートの原材料はカカオ豆と砂糖のみなのですが、まず驚いたのはその香りの強さ!部屋中がチョコレートの香りに包まれるほどです。しかも、種類ごとに香りや味わいの要素は全く異なります。カカオ豆そのものの個性を最も美味しい状態で発揮できるように加工してあげるだけで、様々に表情の異なるチョコレートが出来上がるというのは新しい発見でした。

○ Nutty: 強いローストによるナッツやバニラのような甘くコク深い味わいが特徴。苦味や香ばしさを感じる最も チョコレートらしいチョコレート。

○ Fruity: ローストを抑えたことによる果実のような爽やかな味わいが特徴。爽やかな柑橘系の風味や甘味豊かな 南国系の果実の風味、ベリーのような風味があるものなど。

○ Savory : カカオ豆に由来するハーブやスパイスのような個性豊かな味わいを持つ。花のような瑞々しい風味や スパイシーさ、ハーブ、木の香り、黒糖のようなニュアンスを持つものなど味わいは多岐に渡る。

 

【ワイン×チョコレート マリアージュ実験】

ここまで香りの要素が豊富で個性的な味わいを持つチョコレートならば、間違いなくワインにも合うはず!!ということで、上記の3つの味わいごとにワインとの相性を検証してみました。

チョコレートに合わせるというと、シャンパーニュや甘口ワインが思い浮かびますが、柑橘やベリー、スパイスの香りを持つチョコレートに可能性を感じ、あまり相性は良くないとされている辛口赤ワインも一緒に実験してみました。

● 実験結果

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● 全体的に相性良し!シャンパーニュとのマリアージュ

シャンパーニュはブラン・ド・ブランとピノ・ムニエが多めなもの、ピノ・ノワールが多めなものに加え、やや甘口の4種類で検証しましたが、全体的に合いやすく、飛び抜けて悪いものはありませんでした。

特に良かったのは、③SAVORYと3. Pierre Paillardの組み合わせで、チョコレートのスパイス感や肉厚なフレーバーとピノ・ノワールの複雑なフレーバーが相乗して引き立て合いました。また、①NATTYとやや甘口の4. Moet&Chandonは双方の甘味やボリューム感が合っていて、素直に美味しい!と思わせる組み合わせでした。逆に、ブラン・ド・ブランはキリリとした厳しさを感じる骨格が目立ってしまい、重さ・渋さのある①NATTYには合いませんでしたが、②FRUITYは果実のようなフレーバーがシャンパーニュの厳しさと絶妙に合い、玄人好みのマリアージュとなりました。

 

● 好相性でも「もっと!」とはならない甘口と、Bean to Barにピッタリな辛口赤ワイン

白・甘口と赤・甘口については、①②③ともに甘味同士で寄り添うのでどの組み合わせも標準以上のマリアージュでした。特に②FRUITYとソーテルヌは柑橘のニュアンスを持つチョコレートと爽やかな酸味と濃厚な甘味のバランスが同調して非常に高い評価でした。しかし、甘味×甘味の掛け合わせはずっしりと重く、もっとワインを飲みたい、もっとチョコレートを食べたい・・・という気にはなりません。食後の最後の一口であれば良いのでしょうが、二つを時間をかけて楽しむには厳しいかと思います。

対して、チョコレートにあまり合わないとされている辛口赤ワインは、その定説を見事に裏切ってくれました。バランスが良く、酸が高すぎない赤ワインとの相性が優れていて、特に②FRUITYと8. リオハのテンプラニーリョ主体ワインとの組み合わせは非常に秀逸でした。チョコレートのベリー感とワインの果実味が相乗してフルーティーさがより強調され、二つを組み合わせたからこその混然一体とした味わいに昇華されていました。また、①NATTYと12. カベルネ主体ボルドーについては、ロースト香と樽香が同調して大人っぽいビターな組み合わせで、若干玄人好みではありますが素晴らしいマリアージュとなりました。

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巨大な市場ながら、その巨大さ故に原料の個性にまで光が当てられることがなかったカカオ豆とチョコレート産業ですが、Bean to Barの盛り上がりとともに今後ますます注目度が上がることは間違いありません!ワインやコーヒー豆のように、グランクリュといった等級が生まれる日も遠くないのではないでしょうか。

究極の嗜好品であるワインとチョコレートですから、一緒に愉しみたいという需要も確実にあると思います。バレンタインにチョコレートとワインをマリアージュさせてプレゼントするというのも粋ですね♪今回のニュースレターで、少しでも興味を持っていただけたら嬉しく思います。