[2018年6月号] 気になるワインニュースを総ざらい ~「ワインの税金」と「偽造ワイン対策の最新技術」(広報 浅原 有里)

2018.06.04ニュースレター

皆さま、こんにちは!今号も手に取っていただき、誠にありがとうございます。

今月のニュースレターでは、ワインに関する最近のニュースから、「ワインの税金」と「偽造ワイン対策の最新技術」の2つのトピックを少し掘り下げてお伝えしたいと思います。

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【ワインの税金】

昨年末、日本と欧州連合(EU)がEPA(経済連携協定)の交渉で合意したことで、ヨーロッパの産出品に課せられる関税が撤廃や引き下げになるため、ワインやチーズが安くなるぞー!というニュースが駆け巡りました。2019年には合意から発効となる見通しで、特にワインは「即時撤廃」となりますので、すぐの値下げにつながる予想です。ラグビーのワールドカップや東京オリンピックに間に合いますね!

では、実際には価格はどれくらい下がるのでしょうか?

ワインにかかる税金について、ふわっとしか認識されていない方も多いと思いますので、まずは税制をおさらいした上で、値下げ度合いを検証してみます。

 

☆ 一律の酒税・・・2023年までに増税となります

ワインにかかる税金には、「酒税」と「関税」があります。

「酒税」は750mlボトルのワインは現在全て60円です。とても簡単!お酒を消費する際に課されるものなので、もちろん輸入/国産といった条件に関わらず一律で課税されます。

この酒税、実は2020年から2023年までに段階的に増税されることが決まっています。同じ醸造酒でも現在はワインが60円/750mlなのに対して日本酒は90円/750mlと差があるため、税額を統一して税制を簡素化するという目的です。最終的には75円/750mlまで引き上げられます。

 

☆ 国際関係に影響される関税・・・スティルよりスパークリングの方が高い?

「関税」は“ワインの種類”と“輸入する国の関税率”によって変わります。

まず、あまり知られていませんが、スパークリングワインとスティルワインでは関税率が異なります。例えばフランス・イタリア・スペイン・ドイツ・アメリカなどWTO協定国は現在共通の税率となっており、スパークリングは「182円/l(136.5円/750ml)」、スティルは「輸入価格(CIF※)の15%又は125円/lのうちいずれか低い税率、ただしその税率が67円/lを下回る場合は67円/l・・・つまり最大125円/l(93.75円/750ml)」と決められています。いずれの場合でも、スパークリングワインの方が関税は高くなるように設定されているのです。

※CIF: 運賃保険料込み価格・・・商品の輸出原価に、到着港までの 運賃および保険料を合算した価格で取り決める売買契約

数字が並ぶと分かりづらいため、具体的に算出してみましょう。

◎ 750mlのスパークリングワインの場合、「酒税60円+関税136.5円=196.5円」

◎ 750mlで輸入価格が2000円のスティルの場合15%の300円より93.75円/750mlが安いため後者が適用となるので、「酒税60円+関税93.75円=153.75円」

特にスパークリングワインについては500円でも1万円でも同じ税額が課せられるので、かなり影響は大きくなりますね。

 

☆ チリワインの需要が伸びたカラクリとは?

上記はWTO協定を結んでいるヨーロッパ各国の関税率ですが、冒頭で触れた値下げのニュースにあったように、EU諸国のワインについてはこの関税が撤廃されます。

その他の国々はどうでしょうか?次は国別の関税率を見ていきます。

ここ10年で輸入量が爆発的に増えたチリ産のワイン。これには関税のカラクリがあります。日本とチリは2007年にEPAを発効させ、関税を段階的に下げてきました。この措置が功を奏してチリワインの輸入量増加につながったわけです。現在は スパークリングが「8.4円/750ml」、スティルは「輸入金額の1.2%又は93.75円/750mlのうちいずれか低い税率・・・つまり最大93.75円/750ml」としていますが、来年2019年4月には全て撤廃されます。

また近年注目度が増しているオーストラリアでも、現在はスパークリングで約51円/750ml、スティルで最大93.75円/750ml の関税がかかっていますが、2021年4月の関税撤廃に向けて段階的に関税を引き下げている最中です。

アメリカもTPPによる関税の撤廃が期待されていましたが、この流れに逆行するかのようにトランプ大統領がTPP離脱の判断をしたため現実化は難しくなっています。

 

EUの場合、関税撤廃によって93円~136円分値下がりすることになります。これは2万円のワインにとっては大した金額ではありませんが、1000円のワインには非常に大きいインパクトをもたらしますよね。消費者の方々にとってワインがもっと身近になることが期待できますし、チリなど新世界の国々に押され気味だったヨーロッパのワインが改めて見直される契機になるのではないでしょうか。

 

 

【偽造ワインとの闘い】

Dr.Conti と呼ばるほど著名なワイン収集家だったルディ・クルニアワンが、数百万ドルもの高級ファインワイン偽造で逮捕 されたのが2012年。問題視されてきた偽造ワインが、既に世界中に蔓延していることを改めて認識させられた事件でした。

一部の高級ワインでは、トレーサビリティを保証するプルーフタグと呼ばれるシールやICチップ、QRコードなどを使用した本物の証を付けて出荷するワイナリーも増えていますが、偽造犯とのいたちごっこになったり対策が高価だったりして、なかなか浸透していない現状があります。しかし、最新技術は日進月歩!今後期待できる技術を2つご紹介します。

 

☆ ワイン・ブロックチェーン

ブロックチェーンと聞くと仮想通貨を思い浮かべる方も多いのでは?そうです、仮想通貨に使われている技術を金融ではなく、ワインや宝石、高級ブランド品などに活用しようという動きがあります。

どのような仕組みかと言いますと、ブドウ農家から醸造所、倉庫、運送業者、販売店などワイン生産に関わる業者が、ブドウ畑や収穫地、醸造情報、輸入・配送、温度管理に至るまで様々な情報をシステムに登録し、消費者はワインにつけられたQRコードやICチップからそうした情報を入手する、というものです。・・・と、この一連の流れにはそれほど新しさは感じられないかもしれません。

しかし、ブロックチェーンを使用するメリットは、情報を管理する権限が分散しているため、強固な信頼性が求められる金融業界で使用されるほど完全に情報が管理できることにあります。そのため、ワイン生産の各段階で登録される情報が書き換えられることはありませんし、多様な業者が介在するワイン産業であってもトレーサビリティを確実に担保することが可能になります。導入が進めば、買いブドウを多く使う安価なワインでも、どのブドウ畑から採れたブドウが使われているかまで簡単に追いかけられるようになるかもしれません。

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングというコンサルティングファームが日本で実証実験を開始していますし、中国ではVeChainというブロックチェーン企業がボトルを開けると破壊されるチップを使って偽造対策に乗り出して注目されています。

 

☆ CorkTag (コルクタグ)

凸版印刷が開発したICタグ「CorkTag(コルクタグ)」は、コルク栓を外側から覆うラベル形状にすることで、ワインのコルク栓引き抜きや不正な穴開けまで検知し、その履歴をICチップ内に記録してくれます。ワインの開栓/未開栓をスマートフォンで確認できるほか、開栓した後でもICタグを読み取れば、消費者が産地情報等を見ることができます。

コルクに穴を開けて中身を詰め替えるような精巧な偽造品対策にも対応できることが画期的で、ドメーヌ・エマニュエル・ルジェでも採用されています。しかし、1枚約90円/枚ほどかかるため、当面は高級ワインでの展開になるだろうと思われます。