[2018年5月号] フィラディス実験シリーズ第18弾『焼き肉にマリアージュするワインの方程式を解明せよ!』(広報 浅原 有里)

2018.05.02ニュースレター

みんな大好き『焼き肉』!!!2018年も継続中の一大肉ブームの先駆けになったのが希少部位にこだわって台頭した焼き肉店だったように、食の流行を左右するほどの影響力も持つほど焼き肉は日本人を魅了してやみません。

現在では昔ながらの庶民的なお店から個室だけの高級店、はたまた店員さんが全て焼いてくれたり熟成肉や塊肉が登場したりといったユニークなお店まで様々な焼き肉店が登場していますが、美味しいお肉を頬張る時、ワインラヴァーの皆さんはこう思うのではないでしょうか。「あぁ、一緒に美味しいワインが飲みたい!」と。もちろん高級店を筆頭にワインに力を入れているお店は増えてきてはいますが、マリアージュまで意識しながら扱っているところはまだ多くはないと思います。

焼き肉に合うワインとはどんな味わいなのか?どんな法則があるのか?今回のニュースレターでは、焼き肉にマリアージュするワインの方程式を解明していきたいと思います。

【焼き肉のポイント】

焼き肉とはどんな料理でしょう?簡単に云えば、『薄い肉をシンプルに高温で焼いてすぐに美味しい、前半勝負の料理』です。ステーキは厚切りの肉を比較的低温でじっくり火入れして肉汁や旨味を閉じ込めて焼き上げますが、焼き肉は薄切りの肉を強火で脂を落としながら焼き、濃厚なたれにつけて(お塩の場合はそのままで)一口でパクリ!口に入れた瞬間にガツンと来る香ばしい肉の旨味をタレの風味とともに味わいます。ステーキは咀嚼しながら湧き出てくる肉の旨味を味わう余韻の長い料理だと言えますが、焼き肉は熱々の肉を口に入れた瞬間の美味しさが命です。

要素を分解すると、以下のようなポイントがあります。

* たれ :甘味、フルーツ、塩味、酸味、メイラード反応※ による香ばしさ
※アミノ酸と糖が過熱されることによって結合することによって香ばしい香りを生む

* 炭 :火力(熱)

* 食感 :旨味成分を直に味わう

* 部位 :タン、ロース[脂あり/赤身]、カルビ、ハラミ など
※内臓系部位は多岐に渡るため、今回は省略

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【合わせるワイン】

前回の焼き鳥マリアージュと同様に、今回も焼き肉店様に協力いただいての実験だったため、ワインはある程度合うと予想されるものを絞って持ち込みました。上記の「焼き肉のポイント」に対して、ワインに必要/不要なポイントを検討。以下のように推察し、11種類のワインを用意しました。

● 基本的には赤ワインが合うだろう。ただし、サッパリとリセットしてくれる泡は可能性有り

● 牛肉に負けない全体像の大きさがあり、中心(骨格)がしっかりしていること

● 肉の脂とタレの甘味・旨味があるので、硬質なワインはNG。適度な柔らかさがあること

● 牛肉の脂を中和してくれるタンニンは多め、テクスチャーはしなやかであることが好ましい

● 前半勝負の焼き肉に負けないインパクトがあること

● 酸っぱい/渋すぎる/ペラペラなワインはNG

● 基本的には焼き肉はワイワイとカジュアルに楽しむものなので、値段は上代3,500円以下

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【マリアージュポイント】

検証すべき要素は「フレーバー」「五味(甘味、酸味、塩味、旨味、苦み)」「ボリューム感」「テクスチャー」です。それぞれが どのように合うかを判断する際は、以下のマリアージュポイントを参考にしました。

* 同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う)
* 中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる)
* 補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)

※マリアージュ理論の詳しい内容は以下よりご覧ください
[2013年12月号] 第1回若手ソムリエ応援プロジェクト 『マリアージュ理論セミナー』の講義内容を公開します!

 

【結果発表】

<タン × 塩&レモン>

★新提案!一体感を生むジョッキCAVA★

★赤ワインの酸味がアクセントとなって旨味&甘味を増幅させるマリアージュ★

* タン×塩&レモン ⇒ ①ジョッキCAVA(ドサージュ14g/L以上が好ましい)

* 上級タン ⇒ ①ジョッキCAVA、④ローヌブレンド、③カベルネ・フラン、⑥サンジョヴェーゼ

 

タン塩を食べるタイミングは圧倒的に最初が多いと思いますし、塩&レモンでの味付けなので、泡や白ワインが合うだろうと予想しました。しかし、ネックになるのは焼き肉店のテーブルの構造です。熱源が非常に近く、またテーブル上のスペースも限られるため、ワインクーラーをどーんと置いて…というスタイルはあまり相性が良くありません。

そこで提案するのが、氷をたっぷり入れたジョッキにドサージュが多めのスパークリング・ワイン(今回はCAVA)を注いで楽しむというもの。テーブルの上に置いていてもぬるくなることはありませんし、邪魔にもなりません。ジョッキCAVAの柑橘のフレーバーや硬質なミネラル、発泡感が塩のミネラル感とレモンフレーバーに同調するとともに、爽やかな酸味がタン特有のコリコリした食感(テクスチャー)を更に活かして一体感を生み出しました。通常のタンはもちろん、上級タンのベストマリアージュも①ジョッキCAVAでした。タン以外の肉でも、脂をすぱっと切って口中をスッキリとリフレッシュしてくれるためどの部位にも合わせることが出来ました。

また、噛み応えと上質な脂を感じる上級タンでは④シラーとグルナッシュのブレンドや③カベルネ・フラン、⑥サンジョヴェーゼも合いました。赤ワインの酸味が良いアクセントとなり、肉の旨味や甘味が増しました。

 

<塩で食べる肉 (厚めの肉/ロースなど)>

★上質な料理に昇華させるマリアージュ★

* 塩で食べるお肉 ⇒ ⑧モダン・テンプラニーリョ

 

厚めの肉×塩の組み合わせには、ジューシーな果実味と酸・タンニンのバランスが良いテンプラニーリョ主体の⑧Prunoがベストマリアージュでした。厚さがある分、肉に噛み応えがあるのでワインにもタンニンが必要になります。更にステーキや鉄板焼きと同じ考え方ですが、ワインの酸やベリー感がソースのような働きをして、全く異なる料理に昇華させるようなマリアージュでした。

特に⑧Prunoは滑らかさなテクスチャーや伸びやかな酸が特徴であるため、塩で味付けした肉に上品に寄り添いながら余韻を引き伸ばし、前半勝負であった焼き肉が余韻まで楽しむ料理に様変わりしたように感じました。ガストロノミックな上級者向けのマリアージュだと云えます。

 

<定番部位(ロース/カルビ/ハラミ) × たれ>

★肉の甘味・旨味を増幅★

★上質な料理に昇華させる★

* ロース/カルビ/ハラミ × たれ ⇒ ⑪カリフォルニア・カベルネ、④ローヌブレンド、⑥サンジョヴェーゼ、⑦リオハ

 

焼き肉の定番部位とたれという王道の組み合わせに対して、マリアージュした赤ワインたちはワインのタンニンによって肉の脂をそぎ落とし、肉の旨味とワインの果実味だけをアフターに残してくれたため、とても心地よい余韻が味わえました。前半勝負だった焼き肉にワインの要素が加わることで、余韻までじっくりと楽しめる上質な料理に昇華したように感じました。更にワインの酸味が肉とワインの旨味と甘味の両方を引き立てて増幅させるため、もっと食べたい!もっと飲みたい!と思わせる禁断のマリアージュでした。

特に良かったのが⑪カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨン。たっぷりとした果実味に中心にある強さ、しっかりとした骨格と緊張感、牛肉の強い味わいに負けない酒質の強さがあるため、バランス・ボリューム感ともに最上級の組み合わせでした。ただボリュームが大きく強いだけではなく、アフターには酸やミネラルが余韻をしっかりと支えるワインだったため、肉の余韻を相乗しながら引き延ばしてくれる、完璧なマリアージュでした。

④ローヌブレンドは、ワインの骨格が乏しい分、肉の骨格がワインを支えて寄り添い合いました。またワインの甘味と肉の甘味が同調し、ほっこりと素朴な美味しさが味わえる組み合わせでした。

⑥サンジョヴェーゼは若干肉とタレのインパクトに負けていたものの、豊富な果実味としっかりとした酸が肉のテクスチャーや味わいを一層引き立て、上質感を感じさせる横広がりのマリアージュとなりました。

⑦リオハは、ワインの持つ滑らかな質感が肉に寄り添い、上品な料理に昇華させるような印象を残しました。

 

【実験を終えて】

今回の焼き肉マリアージュ実験の結果も、焼き肉にはビール!ハイボール!というこれまでのイメージをひっくり返すインパクトの強いものだったと思います。

まずは変化球のジョッキCAVA。夏になると氷を入れて飲むシャンパーニュが話題になったりもしますが、グラスではなくジョッキで楽しむことで更にカジュアルに、焼き肉にとてもよく合う新感覚の飲み物になりました。ポイントは、ドサージュ量が多いものを選ぶこと。今回は通常5.5g/Lで販売しているアイテムを、ワイナリーに無理を言って12g/Lと多めにドサージュしてもらって試しましたが、もう少しボディーがしっかりして甘味があっても良いという意見が大多数でした。お肉以外にも、ナムルやキムチといった“焼き肉の友”とも非常に相性が良い上に飽きがこない味わいのため、焼き肉を召し上がる際にはぜひ試していただきたいと思います。

そして、カルビやハラミなどの定番部位×たれという王道の焼き肉には、当初の予想通り、口に入れた瞬間のインパクトがあって全体像が大きく、中心の強さと骨格がしっかりしている赤ワインがベストマリアージュになりましたが、ぴったり合った時の感動は非常に大きいものでした。ジョッキCAVAやビールはすぱっと脂を切ってくれるので焼き肉を美味しく食べることができますが、赤ワインでは肉とワインの甘味や旨味が押し寄せてくるとともに、前半勝負だった焼き肉の余韻をワインがしっかりと引き延ばしてくれるため、美味しさが長~く続きます。そのため、もう一切れ、もう一口…と食べて飲む手が止まらない!と思わせてくれる素晴らしいマリアージュでした。

 

焼き肉とワインのマリアージュの素晴らしさを知ってしまった以上、私の夢は、大衆的な焼き肉店でもしっかりと選ばれたワインが選択肢の一つとして必ず置かれていること!そんな夢を叶えるべく、これからも様々な形で情報発信をしてこの魅力を伝えていきたいと思います。

 

焼き鳥にマリアージュするワインとは・・・?こちらの結果もぜひご覧ください

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