[2018年3月号] フィラディス実験シリーズ第16弾『焼き鳥をさらに美味しくさせるマリアージュワインを検証します!』(広報 浅原 有里)

2018.03.02ニュースレター

焼き鳥に合うお酒と言えば、何を思い浮かべますか?

ビールに焼酎サワー、ハイボール、日本酒・・・どれも捨てがたいですが、そう質問をした時にワインを思い浮かべる方はどれほどいるでしょうか。最近では焼き鳥とワインを合わせる名店もたくさんありますが、まだまだ少数派であるように感じます。

弊社代表の『新年のご挨拶』でも今年のチャレンジの1つに挙げていたように、現在フィラディスではソムリエなどのワイン担当者がいないお店でも簡単にワインペアリングを取り入れていただけるサポートサービスの実現に向けて準備を進めております。その中のジャンルの1つが「焼き鳥」です。

焼き鳥にはどんなワインがどのように合うのか?今回は焼き鳥に合うワインを探し出すために行ったマリアージュ実験の結果を、新サービス提供に先駆けてお伝えしたいと思います。

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【焼き鳥のポイント】

色々な部位を塩やたれで気軽に楽しめるのが焼き鳥の魅力ですが、 ワインに合わせることを考えた時にポイントになるのは、以下の5点です。

① 炭 : 香ばしさ

② 塩 : ミネラル

③ たれ : 旨味、深み、とろみ

④ 食感 : カリッと/ふわっと/にゅるっと、などのテクスチャー

⑤ 旨味 : 滋味

 

【合わせるワイン】

いつもはキッチンスタジオで場所も時間も自由に使って実験を行いますが、今回は焼き鳥店様に協力いただいての実験だったため、ワインはある程度合うと予想されるものを絞って持ち込む必要がありました。

上の「焼き鳥のポイント」に対して、ワインに必要となる/不要なポイントを検討。以下のように推察し、17種類のワインを用意しました。

* 柔らかさ ・・・他の肉に比べ、鶏肉は肉質が柔らかいためワインにも柔らかさが必要。

* 固すぎない ・・・豚や牛と比べて肉も脂も淡白なので、ミネラル・酸ともにある程度は必要だが、引き締めの強すぎないもの。

* タンニンは多すぎない ・・・上の2つと同様に、鶏肉はこってりとした脂があるわけではなく、ガシガシと噛む必要もないため、タンニンは程々が好ましい。

酸・甘味・旨味・タンニンなどの要素が“程よい”ワイン

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【マリアージュポイント】

検証すべき要素は「フレーバー」「五味(甘味、酸味、塩味、旨味、苦み)」「ボリューム感」「テクスチャー」です。それぞれがどのように合うかを判断する際は、以下のマリアージュポイントを参考にしました。

* 同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う)

* 中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる)

* 補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)

 

※マリアージュ理論の詳しい内容は以下よりご覧ください

[2013年12月号] 第1回若手ソムリエ応援プロジェクト 『マリアージュ理論セミナー』の講義内容を公開します!

 

【結果発表】

<ささみ>

★ささみの旨味を増幅させるマリアージュ★

* ささみ+ワサビ ⇒ ①シュナン・ブラン泡、⑧グリューナー・フェルトリーナー、⑨ピノ・グリ

* ささみ+梅肉&大葉 ⇒ ⑩ロゼ、⑫シノン(カベルネ・フラン)

ささみ+ワサビには、瓶内二次発酵で造られた①シュナン・ブラン泡と⑧グリューナー・フェルトリーナーが素晴らしいマリアージュを見せました。ささみ自体には脂がなくサッパリとした味わいのため、①や⑨ピノ・グリのようにほのかな甘味や旨味、ふくらみを補完して増幅する役割をしたワインが好相性でした。また、⑧グリューナーとワサビは、鼻から抜ける香りが同じ方向を向いていて抜群に合いました!こちらもワインの甘味や旨味がささみの旨味を上手に引き上げてくれました。

梅肉&大葉を乗せたささみには、⑩ロゼと⑫シノンがベストマッチ。梅の独特の味わいと酸味・旨味には白ワインよりも軽い赤のニュアンスが必要でした。また大葉のグリーンな風味にシノンの持つ若干のグリーンノートが寄り添いました。

逆に、ささみにワインを合わせる際の鬼門は樽香でした。樽の香りが浮いて分離した印象になってしまい、もっとお肉に脂や強さが必要だと感じました。また、シンプルなお肉+塩分なのでミネラル感が合うだろうと予想しましたが、②③④などの硬すぎるミネラルはテクスチャーが合わずNGでした。

 

<脂多め部位 × 塩>

★鳥肉の甘味・旨味を増幅させ、違う料理に昇華させるマリアージュ★

★余韻の持続、一体感&満足感の創出★

* もも塩 ⇒ ⑧グリューナー・フェルトリーナー、⑫シノン(カベルネ・フラン)、⑤シャルドネ(樽)

* せせり ⇒ 白: ⑧グリューナー・フェルトリーナー、⑨ピノ・グリ、⑤シャルドネ(樽)

        赤: ⑪ピノ・ノワール、⑬グルナッシュ

* 手羽先 ⇒ ⑧グリューナー・フェルトリーナー、⑤シャルドネ(樽)

脂が多めの部位は旨味と甘味が豊富で、そこに塩味が加わります。ここでも⑧グリューナー・フェルトリーナーが素晴らしくマリアージュ!酸・甘味・旨味・ミネラル感が程よくあるので、焼き鳥の塩味とミネラルが同調するとともに焼き鳥の旨味・甘味を更に増幅させました。⑤シャルドネは樽の効いた伝統的なスタイルのブルゴーニュですが、樽香が焼き鳥の香ばしさに同調し、更に鳥の脂の旨味がワインのマロラクティック発酵によるクリーミーさと一体化して、焼き鳥単体で食べるよりもずっと長く余韻を持続させて満足感を生みました。

⑪ピノ・ノワールや⑫シノン、⑬グルナッシュは、焼き鳥と同調するマリアージュではなく、焼き鳥にベリー感やスパイスのニュアンスを与えるとともに(補完)、甘味を増幅して別の料理に昇華させるマリアージュでした。これらの赤ワインは山椒や 七味とも良く合いました。

 

<たれ>

★香ばしさやたれの香りとワインの樽香が相性抜群★

* もも×たれ ⇒ ⑪ピノ・ノワール、⑬グルナッシュ、⑰カベルネ・ソーヴィニヨン

たれをつけて焼き上げた正肉にはやはり赤ワインがぴったりでした。たれの焼き鳥はメイラード反応によるザラメを焦がしたような香りが特長ですが、この香ばしさやたれ特有のコクのあるまろやかな香りがワインの樽香とよく合いました。(メイラード反応: アミノ酸と糖が過熱されることによって結合することによって香ばしい香りを生む)

⑪ピノ・ノワールと⑬グルナッシュは、たれの甘味とワインの甘味が同調して焼き鳥の甘味・旨味が増幅するマリアージュの王道ともいうべき相性の良さ!⑰カベルネ・ソーヴィニヨンは、ワインの硬さは目立つので好き嫌いは分かれるものの、 たれがワインに甘味や厚みを与えて高級感を感じさせる組み合わせでした。

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<肝>

★甘味&旨味の増幅、美味しさの持続性UP★

* レバー×たれ ⇒ ⑭シラー、⑮サンジョヴェーゼ

* ハツ×塩 ⇒ ⑭シラー、⑬グルナッシュ

鉄分を感じる要素を持つレバーやハツなどの部位には、⑭ローヌのシラーがベストマリアージュでした。シラーの持つ甘味や旨味が焼き鳥の甘味&旨味を更にふくらませるとともに、スパイシーさを焼き鳥側に足すのでより複雑な味わいとなりました。焼き鳥はシンプルなため噛みしめるような余韻のある料理ではありませんが、シラーと一緒に味わうと美味しさが複雑さを増して持続するので、余韻を長く楽しむ料理に変化したように感じました。また、レバーは滑らかな食感が特長ですが、シラーの滑らかなテクスチャーやコクがよく合っていました。

レバーと⑮サンジョヴェーゼの組み合わせは、サンジョヴェーゼの酸がレバーの味わいをスッときれいに且つ立体的に整え、モダンでガストロノミックなマリアージュとなりました。

 

<つくね>

* つくね×塩 ⇒ ⑧グリューナー・フェルトリーナー、⑤シャルドネ(樽)、⑩ロゼ、⑪ピノ・ノワール

マリアージュを考える上で最も難しかったのがつくねです。今回いただいたのは砕いた軟骨も練り込まれたつくねで、ふんわりした中にアクセントでコリコリとした食感も入る複雑な味わいでしたが、これは!と思うようなワインがない代わりに絶対に合わないものもありませんでした。もしも味付けがたれだったら別の結果になっていたと思います。

 

【実験を終えて】

今回の結果は、「やっぱり焼き鳥にはビールでしょ!」「日本酒でしょ!」という根強い声をひっくり返すような強いインパクトがあるものになりました!!

実は私も、「焼き鳥&ワインのペアリングが流行っていると言っても、やっぱりビールが一番じゃない?」なんて思っていた一人です。しかし、今回ベストマリアージュの組み合わせをいくつも体験してみるとそんな考えが大きく変わってしまいました。

 

ビールと焼き鳥は、焼き鳥の脂をスパッと断ち切って口の中をすっきりリフレッシュさせてはくれますが、それぞれが交わることで何かが生まれることはありません。それはそれでもちろん美味しいのですが、マリアージュの観点から考えるとビールの苦味が焼き鳥の繊細な旨味や甘味を打ち消してしまうので、良い組み合わせとは言えません。

日本酒も同様に、塩でもたれでもホルモン系でも満遍なく合わせられますが、日本酒の味わいやテクスチャーが全てを包み込んでしまうため、相乗して新しい美味しさに昇華させる組み合わせでは元々ありません。

一方、焼き鳥とワインが一体化すると、「旨味&甘味を増幅させる」「美味しさの持続性UP」「違う料理に昇華させる」など、 1×1=∞ とでも言うような効果が現れて感動すら覚えました。双方の味わいが混然一体となって、口の中で感じる旨味や 甘味が更に大きく広がっていく・・・という体験は、ワイン以外の飲み物ではなかなか出来ないと思います。

 

今回の実験を経て、ワインと食事がぴたりと合った時のマリアージュの感動をもっとたくさんの方々に体験していただきたいという思いが益々強くなりました。新サポートサービスはそんな思いを実現する画期的な一手になるはずです。ぜひ楽しみにしていてくださいね。