[2017年2月号] フィラディス実験シリーズ第12弾『冷蔵庫での保管はワインを劣化させるのか?』(営業 池田 賢二)

2017.02.03ニュースレター

ワインの保管には、温度、湿度、匂い、光や振動の有無など様々な条件があります。その全てをクリアするという意味で、ワインセラーは理想的なアイテムです。しかし、レストランにおいてもご家庭においても、セラースペースの確保は悩みの種。ベストな保管方法ではないと理解していても、止むを得ず冷蔵庫で保管されている方も多いのではないでしょうか。

では、セラー保管と比べて冷蔵庫保管はどれほどワインに影響を与えるのでしょう?そこで今回は、「冷蔵庫保管が本当にワインを劣化させるのか」をテーマに、保管期間(1週間、3ヶ月)を変えて検証してみました。

 

HP2

 

【実験概要】

● ワイン種類

今回用意したワインは、泡、白、繊細な赤2種、ミディアム赤、しっかり赤2種の7種類です。

それぞれ、通常のセラー保管(白・泡のみ試飲直前に2時間冷蔵庫保管)と、冷蔵庫保管1週間、冷蔵庫保管3ヶ月のワインを用意しました。

● 冷蔵庫の条件

今回使用した冷蔵庫は、天板面を作業スペースとして使用できる業務用のコールドテーブルで、扉はステンレスではなくガラス引戸のタイプです。

温度は通常の冷蔵庫と同等の約3℃に設定し、店舗やご家庭の使用条件に近づけるため、週5日は1日1回以上扉の開け閉め(温度変化をつくる)を行いました。また、ワインのみの保管のため匂いのリスクはありません。

● テイスティングのポイント

基準となるセラー保管のワインに対して、まず①劣化しているかどうかを判断し、更に②ワインの各要素(色調・香り・果実・酸・余韻)が変化したかどうかを確認しました。

①劣化と②変化の2つに分けたのは、冷蔵庫保管がワインにダメージを与えるかどうかを正確に判断したかったためです。今回のワインは全て弊社の正規代理店ワインであり、スタッフが飲み慣れていて味わいも分かっているものです。その上で、①劣化はお客様に提供できないレベルを差します。対して、②変化は、基準ワインと比較して客観的に違いを検証しているため、瓶ごとのわずかな差異なども含まれます。

 

【実験結果】

HP1

<○:変化/劣化なし、△:変化/劣化若干有り、×:はっきりとした違い有り>

 

【冷蔵庫保管はワインを劣化させるのか?】

● 3ヶ月の保管でもほとんど “劣化”は感じられない

劣化について、1週間・3ヶ月の冷蔵保管ではいずれのケースでも劣化と判断できるものはほぼありませんでした。

唯一、ミディアム赤のボルドー×3ヶ月冷蔵庫保管のもののみ、4分の1ほどのスタッフが劣化したと判断しました。劣化と まではいかなくとも、カベルネ・ソーヴィニョン特有のピーマン香がより強く感じられたり、果実味の変化(欠如)が見られたり、アフターのタンニンもザラツキが目立つなど、様々な要素で明確な変化が感じられました。

● 低温保管による“変化”は「果実味」「香り」に出やすい

では、低温での保管でワインはどのように変化するのでしょうか?

今回の実験で最も影響が見られたのが「果実味」でした。泡・白・赤の全タイプで変化が見受けられ、保管期間に比例して変化度合が大きくなっていきました。しっかり赤のタイプのみ、果実のボリューム感があるためか3ヶ月でも大きな変化はなく、冷蔵保管の耐久性があると言えるでしょう。「酸」は味わいの構成として果実味に依存している傾向にありますので、果実のボリューム感が弱まった事で酸味がより目立つ結果になりました。

次に影響を受けやすかったのが「香り」です。白・赤ともに3ヶ月保管に変化が大きく、特に繊細な赤やミディアム赤では顕著に表れました。また、「余韻」も泡・白は苦味が増加するという意見が多く、赤はタンニンのザラつきが増加し、果実味とのバランスが崩れてしまう傾向にありました。

保管期間別にみていくと、いずれのタイプも1週間よりは3ヶ月保管の方がより大きな変化が見られる結果になりました。

 

【総括】

完璧な保管状態を目指す場合や長期的な熟成を考えるのであれば、セラーに越したことはありません。しかし今回の実験から、ワインに与える影響は少なからずあるものの、短期間の冷蔵庫保管であれば、劣化することは稀であり特に問題ないのではないかという結論にたどり着きました。

冷蔵庫で保管することの多い泡・白ワインであっても保管期間が長くなると風味の変化はより顕著に現れていたことから、長期の冷蔵庫保管は控えた方がベストです。美味しいワインをよりベストに近い状態で味わうために、今後、冷蔵庫での保管期間を確認出来るような工夫を取り入れてみるのも一手ではないでしょうか。