[2015年8月号]<フィラディス繁盛店インタビューNo.4>Mira! たまプラーザ 根井一成 店長

2015.08.07ニュースレター

次の繁盛店レポートでどのお店を取り上げようか、という話し合いになった際、担当営業から猛プッシュがあったのが、今回の「Mira! たまプラーザ」(以下、Mira!)だ。

その理由は、16坪の店舗で月に600~700本と驚くほどワインが動くこと。しかも、高価格帯やマグナムボトルのワインなども多く売っている。郊外の専門料理店ではめずらしいのではないだろうか。どのようなお店づくりを行っているのか、どんな秘訣があるのかを、店長の根井一成氏に伺った。

 

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たまプラーザは渋谷駅から東急田園都市線の急行で25分の高級住宅地。開発が進む二子玉川の先にあり、閑静な住宅街の広がるベッドタウンだ。駅前には東急百貨店があり、その先の商店街の中にMira!はある。スペイン料理とスペイン産ワインのお店として2010年にオープンした。席数はテーブル14席、カウンター10席、テラス8席の32席で、15:59~L.O25:59(この独特な時間は、開店が早いイメージを打ち出すため!)という長めの営業時間を社員3人+アルバイト1名で回している。

先に結論を述べてしまえば、Mira!が繁盛店である最大の理由は、“生きている店”だからだと感じた。特別他店と異なることをしているわけではないし、ただ単にコンセプトが当たった、サービスが良い、料理が美味しいというだけの店ではない。店としての臨場感を重視し、良い店を作るために小さな工夫や努力をたくさん積み上げており、それぞれが好循環を生んでお客様が付いてくる良店となっているのである。いくつかの項目ごとにそんなMira!の取り組みをご紹介したい。

 

郊外ならではの店づくり

2010年にMira!をオープンさせるにあたり、物件探しの条件は、①1階の路面、②テラス席が作れること、③程よく駅から近いことだった。たまプラーザの北口に条件に合う立地を見つけると、周りの店舗や人の流れを徹底的にリサーチしている。たまプラーザ北口には、イタリアンはあるものの、スパニッシュ、特に本格的なスペイン料理&ワインの専門店は無かった。また、終電で帰ってきてもラーメン屋くらいしかなく、ちょっと美味しいものとワインを楽しみたいというニーズに応えられる店も無かったため、優位性はあるだろうと感じたという。

また、夜間に店の前を通る人を観察し、店舗デザインやコンセプト作りを微調整している。Mira!のある商店街は夜間でも道が明るく、仕事帰りの人がたくさん通る。そのため一人客でも気軽に寄ることが出来るようカウンター席を多く設置し、しかもその真ん中を通路として空けるよう設計したことで、圧迫感や居心地の悪さを感じさせないことにこだわっている。また、チャージを付けず、お得な「ひとりごはんセット」1500円(ワイン・前菜・1品料理)をアピールするのも、ふらりと立ち寄ってもらえるお店という位置付けを目指すが故だ。

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たまプラーザならではの利点としては、ひとつは住民の所得が高い高級住宅街があるということ。もうひとつは、住民の層が幅広いこと。長期休みで地方に帰省する人がいるのは想像できるが、昔からの住民も多いため帰ってくる人もいて、閑散期がなくコンスタントに売り上げが取れているという。8月が最も売上が良いというのも驚くべきことだろう。最も少ない客層は20代だそうで、良いものを求めてくる世代が集まっていることが分かる。

 

ワインを飲む店というイメージ付け

Mira! が最初に話題になったのは980円でカヴァが飲み放題(15:59~18:29の間)の「ハッピーアワー」という企画だ。月に300~400本のカヴァが出るほどの人気企画。根井氏曰く、「かなりギリギリのコスト感」で営業しているとのこと。少し安いだけでは人は来ないし飽きられてしまうと考え、この価格と飲み放題を維持している。この時間に来店するお客様は皆同じものを飲むので、オペレーションは楽になり、他の業務に人員を割くことが出来るという利点もあるが、この企画の本当の目的は、“ワインを飲む店”という認識付けである。この認識を浸透させているからこそ、お客様はMira!にワインを求めて来店し、月に600~700本ものワインが空くのだ。

ハッピーアワー以外にも、ワインリストに必ずラベル写真を入れて、視覚で自分好みのワインを覚えやすいようにしていたり、グラスは武器と考えて大ぶりのものを揃えたり、カクテルは全く提供せずにワインに特化したりと、“ワインを飲む店”というイメージ付けに様々な工夫を凝らしている。

赤・白が5種類ずつ、泡が2種類のグラスワインでも同様だ。グラスワインは、380円から1500円までを揃え、カジュアルな客層からかなりのワイン好きまで幅広く対応する。ビールよりも安い380円のワインを置くことで、お客様の注文はワインに集中する。Mira! ではビールの注文が極端に少ないそうだが、“ワインを飲む店”というイメージが浸透している証拠でもある。

 

特化することで印象付ける

根井氏は、Mira!くらいの規模のお店であれば、特化することが重要だと考えている。何でもあるお店ではあの店何屋だっけ?と曖昧になってしまうが、特化していれば明確なイメージを持ってもらえ、少し遠くても目指して来てくれることになる。また、特化することで前述の“ワインを飲む店”というイメージも活きてくるし、更に“こだわったものを用意してくれる”という意識も持ってもらいやすい。

Mira!で提供するのは全てスペインワイン。ワインのかけ率は通常のレストランより抑えており、ワインを飲みなれているお客様は味わいのコストパフォーマンスの高さに必ず気付いてくれるという。Mira!に行けば“こだわりのワインを安く飲める”と思ってもらうことで、ワイン好きが集まるとともに、この店であれば少し高くても上位のワインにチャレンジしようかな、という信頼が出来ているのである。更に、そういったお客様からの信頼に応えるために、一人一人のお客様の好みを把握し、常に発見のあるワインの提案を行っており、より良いリレーションの構築につながっている。
幅広い層のお客様が来る可能性が高い店であれば、多様なニーズに応えようとあれこれと揃えたくなりそうなものだ。しかし、あえて鋭く特化することで、店側が伝えたいイメージを明確に伝え、お客様はそれを求めて来店することになる。またコアなファンを付けることも出来る。理想的な関係が生まれているのである。

 

“生きている店”をつくる、情報の発信と収集

“生きている店”であり続けるために、Mira!ではSNSを積極的に活用している。FacebookにTwitter、Instagram、LINEと人気のSNSは全て網羅。 常に今日お店に何があるかを発信している。 また、個人のアカウントでもお客様と繋がり、休みの日に色々なお店に行って食べたものをUPしてコメントや反応を見ることによって、お客様が今食べたいと思っているもの、興味のある食材などをリサーチ・情報収集している。

また根井氏は、お客様が集まる人気店や話題のお店に頻繁に訪問し、どんな店に人が集まるのかを常に研究している。郊外で家と店舗の往復になってしまえば情報が入って来づらいため、常にアンテナを張って自分から取りにいっている。そうしないと、変化について行けないし、自分自身もお店も変わっていけないのだという。

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Mira! は、“特化した店”であり“ワインを飲む店”であることをアピールすることによって、そのコンセプトに共感するお客様を惹き付ける店となった。そして常に情報を発信し、また収集することで、ファンになってくれたお客様を飽きさせない工夫を続けている。

一つ一つは小さい取り組みであるが、営業時間外の活動にまで頭を使い続けることは忙しい飲食店の現場ではとても難しく努力が必要なことだろう。それを根井氏はしっかりとした目的意識を持って行っていて、大きな結果を出している。小さな石を積み上げて巨大なピラミッドを築くように、小さな工夫や努力を積み重ね向上していくことでしか到達できない高みにMira!はいるのだと感じた。

 

★ 気になる今後の展開は? ★

“生きているお店”であるが故、フランチャイズのような展開は考えていないが、将来的にはスタッフの独立の支援や、飲食店経営者の苦手とする経営部分だけを取りまとめるような形態での展開は考えていきたいと力強く語ってくれた。