動画あり[2013年12月号] 第1回若手ソムリエ応援プロジェクト 『マリアージュ理論セミナー』の講義内容を公開します!

2013.12.01ニュースレター

今回のニュースレターでは、フィラディスが設立 10周年を機に今年度よりスタートしました“若手ソムリエ応援プロジェクト”の第1回目の内容を、ご参加頂けなかった方々にもお伝えしたいと思います。第1回では、元銀座レカンシェフソムリエ大越基裕氏を講師に迎え、マリアージュセミナーを開催しました。感性や地方性だけに頼らない理論的なマリアージュの考え方を解
説した内容は、ご参加頂いた方々から高いご評価を頂きました。

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マリアージュを考えるにあたって、まず“味わい”というものをきちんと理解しなければなりません。

味わいとは?

<五味(酸味・甘味・塩味・苦味・旨味)、刺激(渋味・辛味)、フレーバー>

味わいとは、酸味、甘味、塩味、苦味、旨味の五味で構成されています。

舌の上にこれらを理解する受容体があって、きちんとそれを味として認識することが出来るのが五味です。旨味に関しては、2000年に初めて受容体があることが世界的に認められました。それ以外に味わいには、刺激があります。渋味と辛味はよく五味の一種に間違われますがこの二つは味というよりは刺激です。ワインのタンニン、渋味は刺激になります。舌が渋味という味わいを認識するのではなくて、舌が収斂する、乾く感じという刺激が渋味ですが、これは私たちがマリアージュを考えるにあたり、赤ワインでは常に考えなければならないことです。

もうひとつ味わいには、フレーバーがあります。フレーバーは香りとは違います。口の中に入れて飲み込む、または吐き出した時にまた戻ってくる残り香のようなものです。実はこのフレーバーがないと味わいというのはほとんどわかりません。実際に鼻をつまんでワインを飲んでみるとわかりますが、全く何を飲んでいるかわかりません。皆さんのようにワインの世界に踏み込まれている方の中でピノ・ノワールが分からない人はいないと思いますが、鼻をつまんで飲むとピノ・ノワールかどうかはわからなくなります。そのくらいフレーバーというのはとても大事で、これを考えていかないとマリアージュはなかなか上手く仕上がっていきません。

このように、味わいとは五味、刺激、フレーバーから成り立っています。

では次に、“ワインの味わい”というものを理解していきましょう。

 

ワインの味わいの構成

やわらかさ(甘味・アルコール)、厳しさ(酸・タンニン・ミネラル) ワインの味わいでいちばん最初に考えなくてはならないのは、そのワインがどういう味わいの構成になっているか、どういう骨格をもっているか、柔らかいのか固いのかといった概要を知ることです。それを知るために見なくてはいけないポイントは 5つ。

最初の二つは甘みとアルコールです。この二つの要素はワインにやわらかさを与えてくれます。

そしてそれ以外に、酸、タンニン、ミネラルの3 つがありあますが、これらはワインに厳しさを与えるものです。厳しさというのは、例えばワインがタイトになったり、しっかりとした構成を持ち始めたりということです。皆さんもイメージしやすいと思いますが、酸味が強いとワインはギュッと引き締まり、タンニンがものすごく強く表現されていると、そのワインはドライで引き締まったものになっているはずです。逆に残糖感のあるものや果実感が熟度を持っているものは口当たりが柔らかいです。またアルコールとは単体で甘いものですから、アルコールが高ければワインは豊かな柔らかいものになります。このあたりの構成やバランスを知ることがマリアージュでは大事になってきます。このようにワインを知る上で最初に大事なことは、この構成を知る、ということです。

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さらにワインを深く見ていきましょう。

 

ワインの味わいを理解する

バランス、余韻の長さ、強さ、複雑性、凝縮度、甘味、酸味、タンニン(渋味)、アルコールの強さ、ミネラル(塩味)、苦み、フレーバー、テクスチャー、発泡性

さらにもっとワインを理解するために見るべきは、英語でいうところのBLICCです。

Balance(バランス)、Length(余韻の長さ)、Intensity(強さ)、Complexity(複雑性)、Concentration(凝縮度)の略ですが、これらはワインの質を教えてくれます。それは言わば、ブルゴーニュのヴィラージュクラスとグラン・クリュの違いが明確になるということです。先ほどの構成は、このヴィラージュとグラン・クリュを見分けるのとはちょっと違います。もちろんそれぞれ構成の違いは出てきますが、それで理解しきれるものではありません。構成はワインのかたちを理解するだけなので、ワインの質を理解するためにはBLICCを見ていかなければいけません。その他、フレーバー、テクスチャー、発泡性などももちろん見ていく必要があります。

これらを全て見ていって、その中の一部をどう使っていくかがマリアージュのキーとなります。今度は“料理の味わい”を理解するポイントをお話します。

 

料理の味わい

甘味、酸味、塩味、苦味、旨味、辛味、フレーバー、脂質、油性、強さ、余韻の長さ、テクチャー、ヨード

料理の味わいの中には、料理にしかない要素があります。脂質と油性です。この二つはマリアージュを考える上で、常に頭においておかなくてはならないことです。脂質とは素材自体が抱いている脂です。油性とはその調理法によって与えられる油です。油というのは粘性が強いので、存在感があります。その存在感がどれくらい強いかによって選ぶワインのボリュームは変わります。素材が抱いている脂も同じですが、カベルネ・ソービニョンに仔羊を合わせる理由は、仔羊がしっかりと重くて強い脂を抱いているので、カベルネ・ソービニョンのタンニンが欲しくなるからです。

ではなぜ鴨にピノ・ノワールなのか。鴨は脂が仔羊よりもずっと軽いです。ですから、タンニンではなく、酸だけで十分脂を中和できるのです。他にも合わせるポイントはいろいろあるのですが、脂の関係だけ見てもこれらの組み合わせが良さそうだということは見えてきます。このように油性と脂質は料理側しか持っていないものなので、ワインは常にそこを見て選ばなければなりません。料理との関係を築く大事なポイントで、どの料理界でも油を使いますから、これは共通することです。

 

以上、ワインと料理、それぞれの味わいを理解した先に始めて、マリアージュの考え方が生まれてきます。

さて、マリアージュの考え方としては“3 つの大きな考え方”があります。

<味わいの補完作業であること>

<味わいの同調作業であること>

<味わいの干渉作業であること>

重要なのは、マリアージュのポイントとなる要素だけに注目するのではなく、ワインと料理のボリュームのバランスを考慮して補完、同調、干渉作業を行うことです。

この 3 つのうちどれをワインと料理の間に持ってくるかということは、いろいろな可能性があるのでこれしかないはないですが、何でもいいというわけでもありません。

ここでひとつ、マリアージュを作っていく上で重要なポイントがひとつあります。これらの補完、同調、干渉の作業しか見ないのではなくて、ワインと料理のボリュームのバランスを考慮しなくてはいけないということです。例えば、香りが似ているもの同士で同調させようとします。タイムの香りがする料理があり、何かグリーンノートのあるワインがあったらきっと香りだけは合うでしょう。でもその料理が脂質もしっかり持っているなら、ワインにもボリューム感がないとダメです。香りだけ合っていても軽かったらダメなのです。このようにひとつのポイントだけ合わせるのでは、マリアージュはなかなかいいものには仕上がっていきません。

 

そこで基本的なマリアージュの作り方です。

先ほどの 3 つの作業を分割して、さらに細かくしていきます。私がマリアージュを考えるときは必ずこの“5 つの理論”からスタートします。

五味のマリアージュ、同調のマリアージュ、中和のマリアージュ、風味のマリアージュ、 テクスチャーのマリアージュです。

ひとつのお皿とひとつのワインの間に、この5 つの理論の中で 2 ~ 3 つが組み込まれている、という感覚です。ひとつということはありません。なぜならひとつでは、ボリューム感などがそぐわなくなってくるからです。頭の中は常に余裕をもって、一歩引いて料理とワインを見ていくべきです。この理論には素材の名前もないですし、私は地方性という言葉も使いません。

同じ地方の料理とワインは確かに合うもの多いですが、それは地方が同じだからというだけではなく、そこにはこういった理論が組み込まれています。地方が一緒だから合います、では何の説得力もありませんし、発展性がないと思うのです。地方性のマリアージュもこのように理論的な考え方が出来るのです。

 

さて、ではそれぞれの理論について説明していきます。

<五味のマリアージュ>

ワインと料理の双方がそろうことにより、 味わいの五味全てがバランス良く補完されることで成り立つマリアージュ

これは、料理側に塩味と旨味がふんだんに表現されている料理の時に使われることが多いです。ですから、和食や中華で成立しやすいということになります。ワインは甘みと酸味を持っているものなので、塩味と旨味を持った料理との相性がいいです。お互い、ないものを補完し合います。そこに苦みはそんなに必要ありません。私たちは、苦みを強く感じておいしいとはあまり思いません。素材が持っているちょっとした苦みで十分なのです。ですから、苦み以外の 4 つの味と強さをバランス良く整えてあげると、とてもしっくりくるのです。

 

<同調のマリアージュ>

ワインと料理、お互いの味わいの個性の一部が寄り添うことでフレーバーを引き立て、

余韻長く双方の味わいを楽しむことが出来るマリアージュ これは私たちが普段から考えることが多いのではないでしょうか。酸味もしくは塩味を同調させることが多いです。酸味は料理にもよく使われるものですから、その酸味の強さとワインの酸味をきれいに同調させてあげるということです。そうすることでお互いのフレーバーがぐっと活きてきます。

ここでひとつ、私の考えているマリアージュの理想像は、食事を食べて飲み込んだ後に、ワインを口に含んで飲み込んで、その後、口の中で料理とワイン、両方の風味がちゃんと残っているということです。かき消してはダメです。料理を食べてワインを飲んで、料理の味がわからなくなるような合わせ方はしたくないと思っています。なので、両方のフレーバーをちゃんと楽しめるのというがひとつのマリアージュの条件ではないかと思うのです。

 

<中和のマリアージュ>

五味や刺激の中で、互いにお互いの個性を中和することができる関係の要素を利用して 味わいのバランスをとることで、互いのフレーバーを楽しむマリアージュ

カベルネ・ソービニョンと仔羊の話はまさにこれです。ワインが仔羊の脂を中和するのです。ワインには脂質がありませんので、脂は同調させることは出来ません。中和かボリュームを合わせるかのどちらかになります。肉の場合は中和の方が多いですね。重い脂質には重いタンニンを合わせてあげるという考え方になります。軽くサシの入った牛肉と何かしらのソース、その肉を食べながらカベルネ・ソービニョンを飲むと肉の濃い脂がカベルネ・ソービニョンのタンニンと中和していい関係を生むわけですが、ではこれが仮に中程度の強さのメルロだったら、脂がもう少し少ない方がいいので、ソースに酸を加えて肉の脂を中和させたり、焼きを強くしてもらったり、厚切りにしないで薄切りにしてもらう、などと考えることが出来ます。

この後のテクスチャーのマリアージュにも通じるのですが、タンニンというのは口の中の刺激です。それを逆の発想で、タンニンを脂に中和してもらうという考え方も出来るわけです。普段私たちは料理が先にあるので、仔羊の脂を中和しようとしてカベルネ・ソービニョンの提案になるのですが、先にそこにカベルネ・ソービニョンがあるのであれば、この強いタンニンをどう中和しようかと考え、脂が乗っていて、噛みごたえのあるお肉が欲しいということになるのです。そのワインがメルロになった場合は、タンニンの量はあるけど噛みごたえが必要なほど口の中での刺激は強くないので、同じお肉を薄切りにして貰うのです。

そうすると中和剤が減ります。タンニンを中和するには、脂もそうですが、噛ませるというのも重要なのです。私たちは口にワインを入れて、口の中に乾きを感じた時、咀嚼をしたくなるからです。また、タンニンが強いワインならソースの粘性を上げてもらい、タンニンが弱いなら粘性をゆるくしてもらったりすることにより、より料理がワイン寄りになってきます。

 

<風味のマリアージュ>

味わいの中でも、味わっているものを理解するために最も大切なものと思われるフレーバー、 ワインと料理の両方のフレーバーの同調によって双方の風味をよりまとまりのあるものにする
これも良く使うものです。料理の中のフレーバーと香りをワインの中のそれと合わせることです。ここはかなり重要です。ワインの中に少しでも柑橘系の香りがあるなら、添えものでのいいので、料理にその柑橘系のものを載せてあげるのです。本当に少しで変わります。例えばホウレンソウのお浸しが目の前にあり、そこに軽いタイプのソービニョン・ブランがあるとします。そのままではお浸しですし、醤油ですし、どうしようかと迷うのですが、そこにゆずの皮を振ってあげるだけですごく合うようになります。方向性が似てくるのです。醤油が多いと難しくなりますが、少量の醤油なら素材感の方が強いので問題なくフレーバーの同調が楽しめます。風味のマリアージュはこのように簡単に作れますし、とても大事です。皆さんのお店でも、お客様が牛のステーキをオーダーして、ちょっと熟成したワインを飲んでいらっしゃるのであれば、シェフに頼んでキノコのソテーを添えてもらうだけでもぐっと合うようになります。

 

<テクスチャーのマリアージュ>

食感に注目した考え方

ワインの柔らかさと厳しさの関係に対する料理の柔らかさと固さ、 温度による食感の変化に注目して考える。味わいの方向性の一致を計る。

先ほどの構成のところでも話しましたが、柔らかいワインには、やはり柔らかい料理が良いです。厚切りのガシガシ噛むようなステーキには、タンニンが固くギュッとあるタイプです。構成のしっかりしている厳しいものには、固めの料理かしっかり咀嚼させる料理をということです。

実はこのテクスチャーのマリアージュはワインの温度でも実現することが出来ます。この魚料理には間違いなくシャルドネだよという組み合わせでも、その温かい魚料理に、その理想的なシャルドネが冷たく出されたら残念です。なぜなのか?フレーバーは合っていますが、テクスチャーが合っていないのです。もうちょっとゆるい感じが欲しいのです。ワインの温度を上げてあげればいいだけなのです。お客様のために、その魚料理のために 30分早く出しておくのです。それだけでマリアージュがぐっと良くなります。

温度はすごく大事です。そういった工夫をするとテクスチャーのマリアージュはクリアできるのです。

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それではこれらの理論を頭に入れながら実際に料理とワインを合わせて行ってみましょう。

 

料理:ホワイトアスパラの冷前菜と温前菜

ワイン:①NV Cuvee Sainte Anne Brut / Chartogne Taillet

②2010 Riesling Kastelberg / Guy Wach

 

まずは冷たい方のアスパラです。比較して欲しいので、ワインの温度はどちらも同じにしています。

このふたつのマリアージュはどちらも合うことは合います。でも私がしっくりくると思うのはアルザスの方です。アルザスの方はピュアできれいな果実感が特徴ですが、そのピュアさがホワイトアスパラのピュアさと同調感があります。

シャンパーニュはもともと複雑なものですが、時間が経つほど味わいがもっともっと複雑になり、そのフレーバーの多さを発揮してしまうので、こういったシンプルなタイプの料理にはこのアルザスのような、シンプルできれいなタイプのリースリングが合います。またこのソースはビネガーを押さえたとはいえ、やっぱりきれいな酸が強く残る料理です。強い酸を中和することが出来るのはアルザスのちょっとした甘みです。このピュアさとちょっとした甘さがこういった料理との相性をぐっと良くしています。

さてもう一皿は、先ほどと全く同じ素材のホワイトアスパラをムニエルにしています。このムニエルに先ほどと同じワイン2種を合わせてみてください。先ほどとは違う側面が見えてきます。シャンパーニュは温度が上がると酵母っぽい香りが強くなってきます。そのシャンパーニュとは、焼いた感じの香りとの相性が良くなって来ます。皆さんご存知のように熟成期間が長いシャンパーニュは、澱からの影響でイースト的な香りを持っていますが、温度を上げる、またはグラスを大きいものに替えてその香りを強くすることで、もともとのそのフレーバーを活かしてあげられます。

なぜ天ぷらとシャンパーニュの相性がいいか。天ぷらの衣をつけて揚げた香りと、シャンパーニュがもともと持っている酵母の香りとの相性が抜群に良いからです。もちろんシャンパーニュの酸味がきれいだからこそ、油を切れるのはあるのですが、実はもうひとつ風味のマリアージュがちゃんと隠れています。だからシャンパーニュと天ぷらが合うし、このムニエルのように焼いたものとの相性が良くなるのです。シャンパーニュのフレーバーの複雑さがこういった焼きのものとの相性を良くしているわけですが、逆にリースリングは先ほどの甘さが邪魔になります。料理の複雑さにワインがついて来られなくなっていて、リースリングの良さが打ち消されてしまいますし、この甘さを中和してくれるものがこの料理にはありません。料理にレモンをかけてワインに寄せてもらってはいますが、ここはシャンパーニュの方がいいですね。

 

最後に、マリアージュはある程度理論があって考えていく方が、発展性があると私は思っています。これまでなんとなくやってくることが多かった世界ですが、そこにちょっとした理論とか、なぜ合うかということを自分の中で理解していれば、お客様に伝える時に説得力を持たせることが出来ます。私たちの仕事にもっともっと意味が出てくるし、やりがいが見えてくるのではないでしょうか。

 

※このニュースレターでお届けした内容は、セミナー全体から抜粋したものとなっております。セミナーの全内容はYouTubeにて配信しております。そちらでは、大越講師が実際に銀座レカンで行っていた温度管理の方法や、その他料理とのマリアージュ実例解説もご覧頂くことが出来ます。

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