フィラディス ワインリスト研究 第3弾 ~ Restaurant TOYO 成澤亨太 ソムリエ & Restaurant Ryuzu 丸山俊輔 ソムリエ ~

2020.04.03ニュースレター

今月のニュースレターは、好評いただいているフィラディスワインリスト研究の第3弾をお送りします。ソムリエの皆様にとって自らの分身でもあるワインリストの作成は、とても楽しくやりがいを感じる一方で、内容に よってお店の売り上げにも直結するとても難しく重要なお仕事ではないでしょうか。そのため、他のお店がどのようにワインを選んでいるのか、気になる方も多いのでは・・・ そこで今回は、活躍中のソムリエのお二人に同一のテーマでワインリストを作成いただき、構成内容や選んだ基準、考え方などをじっくり覗いてみたいと思います。 今号ではお二人のソムリエが選んだワインをご紹介し、来月号にて実際に食事とワインを合わせた結果をお届けします。

今回のお題は、王道の中華料理とのペアリングです。

基本条件

○ペアリングコースとして、6000円での提供を想定

○基本的にフィラディスのエージェントアイテムから選択、 ない場合は他社アイテムも選択OK

○ワインの産地は問わない

○スープやご飯物は含めないが、コースで供するイメージ

 

<メニュー>

①冷菜の盛り合わせ

・クラゲの冷菜・ピータン

・チャーシュー・棒々鶏

②青菜の炒め ③エビチリ ④エビマヨ

⑤麻婆豆腐⑥青椒肉絲 ⑦酢豚 ⑧豚肉の角煮

 

≪ 成澤亨太 ソムリエ ≫   Restaurant TOYO
成澤ソムリエ
1978年生まれ。東京都内にて数店舗でのソムリエを経て、支配人・ソムリエとして銀座 l’Odorante、麻布十番 Liberté atable de TAKEDAにて研鑚を積む。その後、フランス・パリRestaurant TOYOの東京ミッドタウン日比谷の日本初出店を受け、総支配人兼シェフソムリエとして現職。今までに経験した国内外の様々なレストランとのコラボレーションを基軸に、様々な飲食店やバーのドリンク監修、またTBSドラマ 「グランメゾン東京」のワイン選定等、レストラン業務の枠を越えた活動を行い、フレンチの枠に留まらないイノベーティブな料理に合わせて、世界中の飲料からのペアリングを提案している。

 

≪ 丸山俊輔 ソムリエ ≫   Restaurant Ryuzu
丸山ソムリエ
1988年 埼玉県生まれ。 都内のフレンチレストランでサービスとしてのキャリアをスタート。オーストラリアに2年間滞在し、シドニーやメルボルンなどのレストランでソムリエとして勤務する他、南オーストラリア州のワイナリーなどで働く。その後、パリの星付きレストランで1年間研鑽を積み、2017年 帰国後よりRestaurant Ryuzuのシェフソムリエに就任。計3年間の海外滞在期間中は語学取得に励み、現地や近隣諸国のワイン産地、ワイナリー訪問などにも日々足を運ぶ。国内の食通のお客様のほか、海外からも毎日たくさんのゲストを迎えるRyuzuでは経験、スキルを活かし現在も日々研鑽中。

 

WINE LIST by 成澤ソムリエ

<今回のペアリングの方向性とポイント>

中華料理は高貴なものから家庭料理まで、幅広く日本に根付いている料理ジャンルです。また近年フレンチやイタリアンといった洋食でも中華料理のエッセンスを取り入れるシェフは多く、今まさに注目のジャンルと言えます。

ワインのセレクトは、様々なペアリングのテクニックをパターン別に提案する事でコースの流れを飽きさせずに、更に客様に「こういう組み合わせもアリなのね」と発見して頂き、別のシーンやご家庭でもヒントになる提案を心掛けました。

※価格は希望小売価格(税抜・ボトル単価)です

①冷菜の盛り合わせ(・クラゲの冷菜・ピータン・チャーシュー・棒棒鶏)

2018 Caprice de Clemantine Rose / Ch. Les Valentines グルナッシュ50%、サンソー50% / フランス、プロヴァンス

希望小売価格 ¥2,750
複数の素材をまとめるイメージで考える。
現在、世界規模でロゼワインの消費需要は伸びており、モードを知る上で避けては通れないワイン。グルナッシュとサンソーのふくらみある果実味とボディ、ステンレスタンクによるアルコール発酵由来のフレッシュな酸とクリーンで微かなタンニンが各冷菜の個性を心地よくまとめる。

②青菜の炒め

2017 Just B / Just B wines  アルバリーニョ100% / スペイン、リアス・バイシャス

希望小売価格 ¥2,750
大蒜や唐辛子を使った炒めものにバターと塩味を足すイメージで考える。
リアス・バイシャスの顔とも言えるアルバリーニョ。その中でも最も冷涼な気候が織りなすフレッシュでクリスピーな酸に潮風が運ぶ塩味、澱とともに熟成させることに由来する落ち着いた酸とバターの様なボリューム感が加わり、強さの中にも花崗岩由来の強いミネラルで炒め油を切り流し、より青菜の味わいを明確にする。

③海老チリ

2018 Gewurztraminer / Tramin ゲヴュルツトラミネール100% / イタリア、アルト・アディジェ

希望小売価格 ¥3,000
甲殻類の旨味とチリソースに反射と調和をさせるイメージで考える。
トラミンの象徴とも言える品種であるゲヴェルツトラミネールの、海老の旨味に負けないトロピカルでフローラルな香りと、産地の季節と昼夜の気温差による透明感のある酸。オフドライな味わいがチリソースの辛さとの心地よい反射を生み出す。

④海老マヨ

2018 Salarola / Ca’Orologio  モスカート90%、ピノ・ビアンコ6%、フリウラーノ2%、リースリング2% / イタリア、ヴェネト

希望小売価格 ¥2,850
マヨネーズを分解し、再構築させるイメージで考える。
卵黄・酢・レモン・マスタード・油を使うマヨネーズにそれぞれのコク・酸・スパイシーさ・ボディをワインで再構築させ表現する。発酵前に果皮浸漬させる事によるオレンジワインの様なストラクチャーとエレガントな口当たり。モスカートの個性であるムスクや花束を想わせるアロマティックで伸びやかな酸が、実に心地良い調和を生み出す。

⑤麻婆豆腐

NV Rose Reserve / Jean Lallement ピノ・ノワール100% / フランス、シャンパーニュ

希望小売価格 ¥7,300
ペアリングを他の飲料に置き換え、それをワインに落とし込むイメージで考える。
辛味と旨味の強い麻婆豆腐には、まずワイン以外の飲料とのペアリングを考えるとビールである。ホップの苦味をタンニン、辛味を洗い流す爽やかな発泡には鮮やかな酸と細かなミネラル、心地よいスパイスのストラクチャーはピノ・ノワールが持っている事に置き換え、それらから導き出されるワインはロゼのシャンパーニュという事になる。

⑥青椒肉絲

2017 Spatburgunder Vom Loss / Franz Keller シュペートブルグンダー100% / ドイツ、バーデン

希望小売価格 ¥3,000
ワインをソースやドレッシングにするイメージで考える。
マセラシオン後にピジャージュよりもルモンタージュを行う事で、エレガントさと果実味にフォーカスした心地よい酸を持つシュぺートブルグンダーを、醤油やオイスターソースが持つ甘やかな赤系果実のアロマと適度なタンニンにプラスする事で、豚肉の甘味をより一層引き立て口の中で溶け合わせる狙い。

⑦酢豚

2015 Savagnin / Philippe Vandelle サヴァニャン100% / フランス、ジュラ

希望小売価格 ¥4,200
味わいの要素に寄り添わせるイメージで考える。
黒酢がポイントの酢豚に紹興酒にも似たハチミツやリンゴ、香ばしい穀物系のどこかオリエンタルなニュアンスが漂うレトワール特有の石灰泥灰岩質土壌のサヴァニャンをヴァン・ジョーヌと同じくウイヤージュをせず酵母の膜の下で熟成させたものを。クミンやナツメグといったスパイシーな要素に豊かな酸とミネラル感は、正に中華料理の王道。非常に長いドライな余韻はアルコールのボリューム感も相まって力強いペアリングを生み出す。

⑧豚の角煮

2016 7 Deadly Zins / Michael David  ジンファンデル95%、プティ・シラー5% / アメリア、カリフォルニア

希望小売価格 ¥3,050
味わいの強弱を合わせるイメージで考える。
甘辛く八角が香る豚の角煮には味わいのレベルを合わせ、ブラックベリーや胡椒、丁子といったスパイスの風味が強い、凝縮した果実味が豊かなニュアンスとマイルドなタンニンを持つジンファンデル。アメリカンオーク由来のココナッツやバニラの甘い香りは、同じく少し甘みのあるソースとの相性が良い。

WINE LIST by 丸山ソムリエ

<今回のペアリングの方向性とポイント>

世界的に広く普及している中華料理は、時にその地に根付いて現地化なども進み、様々なシーンで楽しまれているヴァラエティ豊かな料理です。たくさんの国で楽しまれる中華料理だからこそ、「世界各国のワインと気軽に合わせて楽しんで貰う」ことをテーマとしました。西洋料理のように主にメインとなる素材に対してワインの相性をアプローチをするより、料理の味わいの決め手となるソース(調味料)との相性にフォーカス。スパイスの辛味や刺激などが加わる料理には、残糖の有無やアルコールの高さなども選定のポイントとしました。

※価格は希望小売価格(税抜・ボトル単価)です

①冷菜の盛り合わせ(・クラゲの冷菜・ピータン・チャーシュー・棒棒鶏)

NV Brut Carte d’Or / Veuve Olivier et Fils ピノ・ムニエ60%、ピノ・ノワール30%、シャルドネ10% / フランス、シャンパーニュ

希望小売価格  ¥5,200
全体的に塩味の効いた味付けの中華冷菜には黒葡萄主体の華やかなシャンパーニュを。対比効果により料理の塩味がワインの果実味を際立て、メリハリが生まれる。
まずは、さっぱりしたクラゲの冷菜と(生姜などを加えたらよりよい)。やや温度をあげてムニエらしい果実感のボリュームや柔らかさを生かしたら、ピータンやチャーシューなどにも寄り添う懐の深さ。爽やかな酸が素材の旨みを引き立て、スパイシーな余韻がアクセントに。1つのワインを色々な料理に合わせる場合は、バランスを測るために温度変化も考慮した上でアプローチするとよい。

②青菜の炒め

2014 Sauvignon / Falkenstein ソーヴィニヨン・ブラン100% / イタリア、アルト・アディジェ

希望小売価格 ¥3,700
冷涼地のソーヴィニョン・ブランらしい柑橘やハーブの香りに余韻でほろ苦さのアクセントがあるのが特徴。アカシアの樽熟成によるニュートラルで品種の個性を生かした風味が春の青菜の爽やかな香りに寄り添う。ごま油とニンニクのしっかりした味付けに、熟成でまろやかになったワインの酸と旨みを。

③海老チリ

2004 Riesling No.1 Oestrich Lenchen / Querbach リースリング100% / ドイツ、ラインガウ

希望小売価格 ¥4,550
適度な残糖のオフドライリースリングでソースの辛味、刺激を和らげ、中盤から上がる酸とミネラルで、エビの旨みを引き立たせる。
強い甘みで辛さを打ち消すのではなく、あくまでソースの風味を残して次のもう一口を誘う仕上がりに。コントラストを効かせたペアリング。

④海老マヨ

2018 Pouilly Fuisse V.V. / Cordier P&F (Domaine) シャルドネ100% / フランス、ブルゴーニュ

希望小売価格  ¥5,000
たっぷりのマヨだれを和えていただく海老マヨにはオークやMLFの香るリッチで滑らかな質感のシャルドネで。樹齢の高さによる深みのある味わいや、柔らかな酸はソースの濃厚な油分を中和し、後半に感じるケチャップの酸味に同調する。

⑤麻婆豆腐

NV Cava Brut Rosado / Sabartesピノ・ノワール100% / スペイン、カヴァ

希望小売価格  ¥2,200
ふくよかなロゼの果実味が香辛料の痺れる辛さとソースの油脂を受け止める。スパークリング特有の低アルコールもポイントで、辛さの刺激を強めず素材の風味や旨みを引き立たせる。余韻にほんのり感じるスパイスの風味は全体と調和する。

⑥青椒肉絲

2017 Castor / Belliviere カベルネ・フラン100% / フランス、ロワール

希望小売価格  ¥3,300
脂の中和と風味のマリアージュ。ワインの酸とタンニンが口内を爽やかにし、豚の旨みを引き立てる。強すぎずソフトなカベルネフランのタンニンと品種由来のグリーンな香りがマリアージュポイント。

⑦酢豚

2017 Gewurztraminer G.C. Zotzenberg / Rieffel ¥4,100 ゲヴュルツトラミネール100% / フランス、アルザス

希望小売価格  ¥4,100
黒酢とワインの酸がお互いを引き立て、ワインの優しい甘みで料理にコクが生まれる。甘酸っぱくリッチなソースにワインの酸味と甘みが加わり、味わいにレイヤーができる。甘味だけで終わらずアフターを引き締める酸も印象的で、より豚の旨みが伸びて心地よい余韻へ。家庭であれば黒酢の代わりにバルサミコ酢を使ってみてもよい。

⑧豚の角煮

2016 Pinot Noir Sonoma Coast / Anthill Farms ピノ・ノワール100% / アメリカ、カリフォルニア

希望小売価格  ¥5,500
ワインの酸味と苦味(タンニン)の補完により五味のバランスを測るコンプリメンタリーペアリング。ジューシーだがじんわりと優しい旨みのある果実感が特徴のカリピノ。程よい酸とタンニンが豚の甘やかな脂を中和し、旨みを引き立てる。家庭では料理酒の代わりに赤ワインを使うとより良い組み合わせに。

考察

次回のニュースレターでそれぞれの料理に対して選んでいただいたワインが合うのかという味わいの検証を行うため、今号ではお二人のペアリングコースの流れを見ていきたいと思います。

①冷菜の盛り合わせ(・クラゲの冷菜・ピータン・チャーシュー・棒棒鶏)

お客様の気分を盛り上げる上で重要なコース最初の1杯。丸山ソムリエは王道のシャンパーニュで満足度の高いスタートを切ったのに対し、成澤ソムリエはトレンドを押さえたロゼという粋な選択でした。
異なる4種の料理の盛り合わせのため、どれか一つに合わせるのではなく全体に合うようなバランスが重要になります。
丸山ソムリエはムニエのパーセンテージの高いシャンパーニュで温度変化も考慮に入れた寄り添わせるペアリングを、成澤ソムリエはロゼの果実味やボディ・タンニンといった特徴を活かしてそれぞれの料理の個性を一緒にまとめ上げるペアリングを提案してくださいました。

②青菜の炒め

お二人とも爽やかな白ワインをセレクトしており、方向性は遠くありません。

③エビチリ

お二人が選んだのはアロマティックな白ワイン。二人ともエビチリの旨味を引き上げ風味にワインの要素をプラスすることで、料理とワインの両者を引き立てるペアリングという点で共通点が見られます。

④海老マヨ

エビマヨではまたしても成澤ソムリエの遊び心が垣間見えます。オレンジワインに近いスパイシーさがあるアロマティックなワインでお客様の意識を離しません。
対して丸山ソムリエはブルゴーニュのシャルドネを選択。ブルゴーニュ白ということでお客様の満足度を満たし、料理にしっかり合わせる気遣いのペアリングを披露してくださいました。

⑤麻婆豆腐

お二人ともに選んだのはロゼスパークリングでした!成澤ソムリエはコース中盤であえてのシャンパーニュロゼ、丸山ソムリエは比較的王道の流れからここで変化球のカヴァロゼを合わせました。二人ともコースを活性化させてお客様を楽しませる組み合わせでした。

⑥青椒肉絲

成澤ソムリエはドイツのピノ・ノワール、丸山ソムリエはロワールのカベルネ・フラン。どちらも適度なタンニンを持つ滋味深い赤ワインを選択しています。

⑦酢豚

ロゼ泡、赤ワインという流れの後に持ってきたのは、お二人とも個性的な白ワインでした。やはりお客様を飽きさせません!
成澤ソムリエは紹興酒のイメージから選択したサヴァニャンで、余韻の長い同調のペアリングを想定。対する丸山ソムリエは、アルザスのゲビュルツで料理にワインの酸味や甘味を補完していました。

⑧豚肉の角煮

最後の角煮には、成澤ソムリエはしっかりとしたジンファンデルを、丸山ソムリエはカリフォルニアのピノ・ノワールを合わせました。 両者とも最後に満足感のある赤ワインを持ってくることで、しっかりとペアリングのコースを締めているのが印象的でした。

まとめ

今回の仮想ペアリング前編ではコースの流れだけを見てまいりましたが、 お二人ともお客様を楽しませ満足させるペアリングを組み立てていることに脱帽しました。成澤ソムリエは随所に遊び心あるペアリングを入れてワクワクさせる流れを作っていましたし、丸山ソムリエのコースにはお客様を飽きさせない絶妙な緩急と値段以上に感じるような満足感がありました。
さて、こうしてペアリングコースを夢想していくと、やはり実際に合うのかどうかが気になりますよね?次回の後編では、実際にお二人のソムリエと中国飯店三田店にて検証会を行なった様子をレポートします。料理とワインを組み合わせるマリアージュのテクニックにフォーカスしますので、ぜひお楽しみに!